研究課題/領域番号 |
25370595
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
得丸 智子 宮崎大学, 教育文化学部, 非常勤講師 (60343612)
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研究分担者 |
小林 浩明 北九州市立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10326457)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教師の成長 / 日本語教師養成 / 内省 / TAE / ユージン・ジェンドリン |
研究実績の概要 |
本研究は、TAE(Thinking At the Edge)を応用した「教師の成長をめざす再帰的日本語教育実践研究法」の構築を目的としている。平成26年度は【効果測定法の検討】【「TAEシート」による情報収集】【研究ツール「TAEソフト」の開発】【研究成果の発表】を行う計画であった。 【効果測定法の検討】は、前年度調査により、当初予定の質問紙調査では不十分だとわかったため、自由記述、インタビュー、授業(実習を含む)録画、教案収集を行った。 【「TAEシート」による情報収集】は、新シート(紙媒体)を開発し、宮崎と北九州で、大学院生と日本語学校教師に実施し意見を収集した。 【研究ツール「TAEソフト」の開発】は、収集した意見を反映して「TAEシート」を改訂し、㈱ソフトレイドに依頼し、説明用画面39、作業シート27枚、作業教示27枚からなるウェブサイト「TAEレフレクション」(日本語版)を構築した(一部、準備中ページあり)。これを用いて台北でデータ収集を行った。英語版作成を前倒しで開始し他言語への翻訳も開始した。 【研究成果の発表】は、前年度の「メタファの動的生産性」の議論を深め、World Association for Person Centered & Experiential Psychotherapy and Counseling 2014で「Philosophies and practices of bodily knowing」と題し、研究協力者の村里忠之氏と共同発表した。大学院生1名の教育実習の振り返りを「日本語教育への質的研究の貢献―TAEの3つの使用法―」と題し、研究分担者の小林浩明氏、研究協力者の近藤朋子氏と共同発表した。また、これを論文にまとめ『主観性を科学化する(仮題)』(金子書房)第12章「実習生は海外日本語教育実習をどのように体験したか」として入稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の(1)から(5)のうち「(1)哲学的議論をふまえて理論モデルを策定する」は、前年度の「メタファの動的生産性」の議論を深め、国際学会で発表した。「(2)理論モデルに依拠した実践研究法を構築し、『TAEシート 』『TAEソフト』の研究ツールを開発する」は、新しい「TAEシート」(紙媒体)を開発した。それを大学院生と日本語教師に実施し意見を収集し、その意見を「TAEソフト」(TAEウェブサイト)の開発に反映させた。(3)国内外の日本語教師や日本語教育実習生に実践研究の実施を依頼しデータを収集する」は、紙媒体を用いて宮崎と北九州で、インターネットを利用して台北で、それぞれデータを収集した。「(4)主に「教師の成長」の観点から効果を検証する」は、大学院生1名のTAEによる日本語教育実習の振り返りを、TAE作業に対するインタビューを挿入しながらおこない、その分析結果を、日本語教育国際研究大会において「日本語教育への質的研究の貢献―TAEの3つの使用法―」と題し発表した。「(5)「TAEシート」「TAEソフト」をイン ターネットで公開し「再帰的日本語教育実践研究法」を発信する」は、2015年2月にウェブサイト「TAEリフレクション」を構築し公開した(一部、準備中のページあり)。当初は、ウェブ上でシートに書き込めるものを計画していたが、個人情報をウェブ上に安全に保管するシステムは莫大な費用を要することが判明したため、ウェブ上からワード版やエクセル版のシートをダウンロードし、日本語教師がそれぞれオフラインで作業し保管できるものに変更した。これによりウェブサイト構築費が圧縮できたため、当初計画にある英語版に加え、中国語版、韓国語版等を作成することとした。 ウェブサイトの日本語版構築が達成でき、英語版作成を前倒しで開始し、多言語対応も開始したことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
TAEウェブサイト(「TAEリフレクション」)日本語版を公開でき、英語版への翻訳を前倒しで開始できたことなどから、研究全体はおおむね順調に進んでいる。しかし、実施例の掲載など、まだ「準備中」のページがある。実施例は、今年度収集したデータをもとに、次年度、秋までに完成したい。また、前年度、「独力でTAEが実施できるような実施マニュアルなどの支援ツールの作成」の必要性が認識されたが、今年度は、具体策を講じることができなかった。今年度のデータ収集の過程でも、同様のニーズが繰り返し確認されており、重要課題であると認識している。支援ツールを提供することができれば、本研究の目標「教師の成長をめざす再帰的日本語教育実践研究法の構築」がより高いレベルで達成できる。次年度は最終年度となるので、具体的な成果をあげていきたい。 ウェブサイトを多言語化することになったため、英語版、中国語版、韓国語版を完成させることが、目標として加わった。かなりの作業量になると予想されるが、中国語、韓国語を母語とする日本語教師は多く、需要はあると考えられるので、早期公開をめざす。これまでの研究過程で、教師だけでなく、学習者が、TAEを使って経験を整理することで、プロジェクトワークや作文教育に使えるだろうという意見が多く聞かれた。今後は、「TAEリフレクション」のサイトを、日本語教師の日本語教育実践の振り返りに使用するだけでなく、学習者がより広い学びのために活用できるものにしていくことも検討したい。 平成26年度に収集した、宮崎大学の大学院生や北九州の日本語教師、台北の日本語教師のデータの分析が、方法に対する意見集約とその反映にとどまっており、振り返り実践の内容分析は、充分に行えていない。次年度は、これらの振り返り実践を分析し、その成果を学会発表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
TAEウェブサイト構築の経費が、当初予定よりも安価だったため。
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次年度使用額の使用計画 |
多言語版作成の翻訳費用の一部にあてる。
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備考 |
説明用画面39、作業シート27枚、作業教示27枚からなるウェブサイトで、日本語教師が、説明画面を読みながら進み、教示(ワードファイル)とシート(エクセルファイル)をダウンロードし、記入しながら日本語教育実践を振り返ることができる。
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