最終年度にあたり、2015年7月に日タイ言語文化研究会東京大会を開催し、研究成果を発表した。また2015年11月に科研発表会を行い、研究成果を発表した(11.研究発表を参照)。このほか、日本側とタイ側で行われた研究大会における発表原稿をもとに2015年7月に学術誌『日タイ言語文化研究』(ISSN:2187-4387)を本助成により刊行した。学術論文18本を収録し、国内外の大学および関係研究諸機関に送付された。また、2015年8月にはタイ国北部、中部、南部大学諸機関に実地調査を行い、関係者との交流、意見交換を行った。さらに、2016年3月には国際交流基金主催のタイ教育関係者アドボカシー招聘事業の懇談会に参加し、有意義な意見交換、交流を行ったことも、タイ国内の抱える日本語教育の現状と課題を明らかにすることができた。 最終報告書とともに計11名の研究者の研究論文集を作成した。日本語教育、文化事業建設、文学交流など多岐にわたり、日本語教育史を日本とタイの言語文化接触の観点からとらえた論文集として貴重な成果と位置付けられる。研究代表者の論文のなかには解題をふくめた学術論文6本以外にも、研究期間以前に発表された関連論文を修訂したものを2本、さらに新たに書き下ろしたものを1本、計9本を収録した。また、巻末には戦時期における日タイ言語文化接触と摩擦にかかわる詳細な年表などの資料をおさめた。 また同時に、研究代表者の収集した原典史料を六項目にそって収めた。これらの原典史料は今後も同研究を進める上で極めて示唆に富む内容を有し、従来分散して参照が困難であった史料を集約した点は今後この方面の研究に関わる研究者にとって大きな寄与となる。この二冊の報告集は、今後の日本とタイの言語文化比較研究、タイの日本語教育の展望にあたって重要な資料となることが期待される。
|