研究課題/領域番号 |
25370604
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮崎 七湖 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授 (40579166)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本語教育 / ケース教材 / 教員研修 / ケースメソッド教授法 / 問題発見解決能力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本語教育に携わる教員向けの研修で用いる、ケース教材を開発することである。研究のプロセスは、ケース教材のもととなる事例の収集、ケース教材の作成、ケース教材を使った教員研修の実施とその検証の三つのステップから成る。 26年度には25年度に引き続き、本研究のために組織された11名のケース教材作成グループメンバ―でケース教材の資料となる事例を集めるためのインタビュー調査を行った。具体的にはさまざまな現場で実践を行っている日本語教員合計40名にインタビューをし、その語りから、問題発生のエピソードを集めた。 また、ケース教材作成グループで、1か月に1回のペースで定期的に打ち合わせを行い、ケース教材の作成方法や方針等を話し合った。そして、インタビューで語られたエピソードの中から、ケース教材にするのに相応しいものを抽出し、ケース教材を作成を試みた。現在までに20のケース教材を作成し、検討と修正を重ねている さらに、作成されたケース教材を用いた研修を2回実施した。1回は都内の某日本語学校での教員研修で、もう1回はNPO日本語教育研究所主催で行われたワークショップ形式の講座である。どちらも、実際にケース教材を用いた研修が行える貴重な機会であり、今後のケース教材作成と研修の実施に多くの示唆が得られた。 さらに詳細なデータを収集するための調査を実施した。具体的には研究協力者16名を日本語教育経験による4つのグループに分け、ケース教材を用いた討論をしてもらい、音声を記録した。その後、個別インタビューでケース教材を用いた討論活動について感想を述べてもらった。今後は、討論活動とインタビューの内容を分析し、ケース教材を用いた討論が実際に参加者にどのような学びをもたらしたのか、また、このような活動にどのような問題があるのかを明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ケース教材の作成にやや遅れが生じている。これは、予想していたよりも、ケース教材になるような事例がインタビューでの語りから得られなかったことが一つの原因である。さらに、インタビューで得られた事例をそのままケース教材にしようとしても、なかなかいい教材にはならないことが多く、ケース教材の作成に時間がかかっているのも一つの原因である。 また、研究代表者やケース作成グループメンバーは、これまでに留学生対象のケース教材作成を行ってきたものの、教員のためのケース教材の経験が少ないため、「よいケース教材」や「より議論が活発に起こるケース教材」といったことの共通の認識ができあがっていなかった。しかし、ケース検討会を重ねるうちに、共通の認識ができつつあるため、今後は教材作成を加速していけると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
27年度には、まず26年度に行った調査の文字化と分析を行う。この調査結果を踏まえ、今後、どのようなケース教材を作成し、どのような教員研修を行ったらいいのかを再検討し、更なるケース教材の作成とそれを用いた研修を行っていく。 また、ケース教材を作成し、検討を行う中で現職の教員だけでなく、教育経験のない大学生や大学院生、あるいは日本語教師養講座の受講生にも、ケース教材を用いた教育が有効ではないかという考えに至った。今後は対象者を広げて、現職の教員のみならず、このような対象者にも使用できるケース教材の作成も行っていく。そのためには、日本語教育学専攻課程のカリキュラムや日本語教育能力検定試験のシラバス等を参考にし、ケース教材のテーマやトピック、教育内容の範囲を再考する。 また、ケース教材を作成していく中で、テーマやトピック、現場などに偏りが出てくることが予想される。全体のテーマやトピック、現場を見た上で、不足している部分を作成していく必要がある。その場合は、インタビュー調査に戻って、事例の収集から始める必要があるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度にはケース教材の基となる事例をインタビュー調査で収集したが、予想していたよりもケース教材として相応しい事例が得られなかった。もともとは全てのインタビューを文字化する予定であったが、上述の理由から、全てのインタビューを文字化する必要はないと判断した。予算の多くをインタビューの文字化の委託に使用する予定であったため、その分の予算が余ることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度に4グループ(16名)のケース教材を用いた討論の録音とその後のインタビュー調査を実施済みであり、この討論とインタビュー調査を分析するために文字化の委託が必要となる。26年度に使用できなかった額の一部をこの文字化に充てる予定である。 また、研究代表者は任期満了により、27年4月に所属機関が変更となった。これによって、研究協力者であるケース教材作成グループが在住する首都圏から離れた都市の教育機関に勤務することになった。今後、ケース教材作成グループとの打ち合わせや、ケース教材を用いた研修を行うのに、交通費が発生するため、昨年度の未使用額の一部を打ち合わせや研修実施のための交通費に充てる。
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