日本人英語学習者のワーキングメモリ内の言語処理上の特徴として、実行機能や音韻ループの処理及び長期記憶貯蔵庫からの既知情報の検索に焦点を当て、外国語活動と中学校英語の影響に関して、母語である日本語と外国語である英語の調査を行った。 対象校の選定にあたっては、学校教育の連続性から判断し、大学の附属小学校及び附属中学校にご理解とご協力を頂き小学校高学年と中学校の全学年を対象に4年間実施してきた。昨年度から新たに小学校の中学年も研究対象に加え調査を実施し、今年度も同様に中学年を含め実施した。研究の概要及び主な結果は以下の通りである。 研究の概要としては、ワーキングメモリ内の実行機能や音韻ループの処理及び長期記憶貯蔵庫からの既知情報の検索の特徴を証明するにあたり、両校種の英語の授業において頻度の高い基本的な語彙である簡単な色に関する語彙を使用しているストループ及び逆ストループテストの二言語版(日本語版と英語版)を使用した。このテストは集団測定が可能で、クラス毎に小学校の中学年、高学年及び中学校の全学年に実施した。このテストはワーキングメモリ内の言語処理を行う際に極めて重要とされる注意力及び選択的注意力を測定するもので、二言語版を比較することで母語と外国語の情報処理の違いを探った。 主な結果としては、注意力は二言語ともに上の学年ほど高く、母語の優位性が確認された。また、選択的注意力は年齢により複雑な違いが見られた。全体的には今後の継続的課題として、学習者の確かな既知情報に基づく年齢及び英語指導の比較を行うことの重要性が示された。
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