研究課題/領域番号 |
25370616
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
村上 雄太郎 茨城大学, 工学部, 教授 (50239505)
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研究分担者 |
今井 昭夫 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20203284)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 漢越語 / 名詞用法 / 特定性 / 日本語教育 / ベトナム語教育 / 言語接触 / 対照言語学 / 語彙習得 |
研究実績の概要 |
日本語でもベトナム語でも、数多くの2音節漢語が使用されているが、その名詞用法に関しては、日本人学習者にとって正しく使うのが難しい場合が多々ある。平成27年度は、ベトナム語辞典に収録されている漢越語で動詞とも名詞とも使えるものを集めて、その名詞としての用法の特徴を考察しながら、日本人学習者から見た漢越語の名詞用法の諸問題を考察した。具体的には、Ⅰ.‘chi huy’(指揮者)など動作の行為者を表す名詞と、Ⅱ.‘bao cao’(レポート)など動作の内容を表す名詞と、Ⅲ.‘bao dong’(暴動)など事柄を表す名詞に分類したうえで、Ⅲ類の場合は‘su’等の形式名詞を付け加えても大した意味の差を生じないのに対し、Ⅰ類とⅡ類の場合は、‘su’等を付け加えると、漢越語の意味が著しく違ってくることを指摘した。また、日本語の漢語表現と違って、指示語や連体修飾句が後続する時には、漢越語名詞の前に‘nguoi chi huy nay’(この指揮者)や‘ban bao cao nay’(このレポート)や‘cuoc bao dong ay’(その暴動)のように‘nguoi’や‘ban’や‘cuoc’等の類別詞が使われるのが普通であることも明らかにした。研究代表者は、この成果を研究分担者との共著で『東京外大 東南アジア学』第21巻に発表した。また、ベトナム・フエ外国語大学で「日本語の連体修飾節構文―ベトナム語との対照を試みてー」と題する研究発表を行った。 一方、研究分担者の今井は、『ベトナム語辞典』(ダナン出版社、2011年)の見出し語約4万5850語のうち漢越語の見出し語の数を勘定し、その割合が約3割であることを突き止めた。また2種類の『漢越語小辞典』を用いて、品詞別の割合を調べた。その結果、いずれの辞典においても、名詞45%、形容詞22%、動詞31~32%であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、日本人学習者から見た漢越語(漢語起源の語彙)の名詞用法の諸問題について考察した論文をまとめた。 日越辞典編纂へ向けての基盤構築研究で、注目すべき漢越語名詞の意味的・統語的特徴に関する研究に一定の成果をあげたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
日本人学習者にコンパクトかつ有益なベトナム語辞典編纂に向けての作業として、平成27年度に続き、平成28年度もベトナム語学習者の初級、中級、上級の、それぞれのレベルで習得すべき漢越語の語彙の選定作業を進めていきたい。そのために、各種のベトナム語学習書やベトナム語辞典などを参照しながら選定作業を行なう。 また、研究面としては、現在、日本では最も語彙数の多い越日辞典である川本邦衛編『詳解ベトナム語辞典』(大修館、2011年)では、tin (ニュース)はtan [訊]の、tin(信じる)はtIn [信]の訛音だとされているが、「訛音」という概念の妥当性や、分類方法についても再検討を加えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外出張が急に行けなくなったので、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究用図書等の物品の購入に使用する予定である。
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