これまで、工学系英語論文の分析は広く行われ、研究成果を取り込んだESP教材も多数開発されてきた。しかしながら、大学に入学したばかりの新入生にとっては、こうした教材は、日々の学習内容との連続性を欠いているために、初年次学生を対象とした語彙教育においては、十分な教育効果を得られない場合がある。本研究では、大学1年生・2年生の学生を対象とした工学科目の日本語教材と英語教材のコーパスをパラレルに構築して、それぞれの解析で得られた結果を統合することで、日本の工学学生の現状を反映した、段階的ESP語彙教材の開発を目標としている。 本年度は、これまでの研究を踏まえ、下記の研究を行った。 (1)工学を専門とする教員・研究者の協力を得て、建築分野、物理学分野のコーパスを拡充・精製し、分析を行った。また、化学分野の日本語コーパスの構築と分析を行った。これらの分析結果と、25年度26年度の研究結果を加え、語彙表の修正を開始した。 (2)ESP教材を用いた語彙教育、評価を行い、同時に、アンケートを実施して、どのような学習者がどのような学習を行う傾向があるのか、どのような効果が期待できるのか、調査を行った。 (3)名古屋工業大学において、科研シンポジウムを開催し、英語教育・日本語教育に携わる研究者と意見交換を行い、それぞれの立場から、工学系語彙教育および語彙教育研究の現状と問題点を精査した。また、北京化工大学において、外国語教員・大学院生と、工業大学における英語教育日本語教育に関する研究会を行い、両国の言語教育における現状と問題点について意見交換を行った。 (4)内外の学会や研究会に参加し、関連の資料収集を行うとともに、上記研究成果を学会・研究会において発表し、関係する研究者と広く意見交換を行った。
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