研究課題/領域番号 |
25370666
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
大和 隆介 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (60298370)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 動機づけ / 自己調整能力 / 理想自己 |
研究実績の概要 |
本研究は、「L2動機づけシステム」(Dornyei: 2005,2009)の観点から日本人英語学習者の動機づけに関する時間的変容とその要因を検証することを目的としている。大学生を対象に行った平成25年の調査に続いて、平成26年度は中学生および高校生を対象として英語学習に関する動機づけの特色や変化について以下の方法で調査・分析した。 参加者: 中学生313名(男子167名、女子146名)高校生76名(男子40名、女子36名) 調査方法:各学校において授業担当教員が質問紙調査を行った。その際、調査結果は成績には一切関係しないことを説明した上で「今まで、英語の勉強をやる気がでたとき/でなかったときの状況とその理由」について、無記名で自由記述での回答を求めた。 分析方法:質的内容分析 (Mayring, 2000) の手法を用いて、自由記述の中で複数の事柄について述べられているものは、文章を複数のアイディア・ユニット(IU)に分割し、夫々に対応するラベルを付与した。その後、付与したラベルを、L2動機づけ自己システムの3つの要素(理想自己、義務自己、学習経験)と学習意欲喪失の4つのカテゴリーに分類した。その後、校種、学年、男女に注目し、グループ間での比較を行った。 結果:全体的傾向として、英語の学習意欲に与える影響力は、学習経験>義務的自己>理想自己の順序であった。更に詳細に分析すると以下の知見が得られた:1.理想自己については、中学から高校においては、学年進行により変化がほとんど見られず、大部分の学習者が具体的な英語使用に関する将来の自らの姿を描けていない可能性がある。一方、2.義務自己と学習経験は学年進行により増減する傾向にあり、3.学習経験の多様性が減少すると学習義務自己と学習意欲喪失の割合が高まる傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動機づけの質問紙調査は中学生に関しては、当初の予定より多くのデータを得ることが出来たが、高校生については当初の予定より少なくなった。データの信頼性を高めるためには、高校生についてもサンプル数の追加が必要に思われ、平成27年度において追加調査を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、理想自己の形成に資する指導法の開発に取り組む予定であるが、研究計画を作成する段階で想定していたKeller (1983)が提唱しているARCSモデル、辰野(2009) が提唱する「学習意欲を高める12の方法」、Oxford(2011)の自己調整型ストラテジーモデルだけでなく、をこれまでの調査により得られた知見(特に動機喪失要因)にも留意して、効果的な指導法や学習活動の考察を進めたい。 パイロット授業 1.目的:高校生・大学生を対象として、研究代表者及び研究協力者が上記の指導モデルを参考に学習意欲を高めるような指導を行い、「L2理想自己」の形成に寄与しうる具体的学習活動を検証する。2.指導方針:これまでの動機づけ実態調査から得られた知見を参考にしながら、学習者の英語力の習熟度および動機づけの傾向に対応した学習活動を考案する。 3.指導内容:中高大での学習活動の一定の共通性を確保するために、特にライティング活動に焦点をあてた授業実践を行うことにする。また自発的学習活動を促す学習ストラテジー指導の要素を含めることとする。4.授業評価:授業実践の効果は、学習者による授業評価(記述式)と自己効力感・動機づけ傾向の変化などを尋ねる質問紙および面接により行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での学会発表を前年度に行う予定であったが本務校の校務のために予定が合わず断念したため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算については、海外での学会旅費に使用する予定である。
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