研究課題
基盤研究(C)
英語教育における文学教育の重要性について、初年度は「実証」と「最新の世界の動向と理論的裏付け」を中心に研究を進めた。「実証」については、日本の様々な職種に従事する人々に英語の使用を巡って必要なことを聞き取り、その結果、古今東西の文学者が文学の意義として主張する内容に演繹できることを確認した。「世界の動向と理論的裏付け」については主に文献を渉猟することによって進めた。日本のビジネスパースンが必要とする100の素養として文学がトップ5に入っていることを確認した。また、経営学の国際戦略と最新の世界文学、とくにEast-West Studiesというアプローチが原理的に通底していることを確認した。世界の動向については後述するカンファレンスへの参加も通して、英語教育への文学教育の融合が世界的に主張されている現状を確認した。以上のことから、グローバリズム世界における自律した英語使用者の育成は、口語実用英語偏重教育ではなかなか実現しにくいという結論に達した。また、英語の授業で英米文学をどう読むのか、その具体的な方法について世界文学の知見からモデルを作った。以上の成果を、計画のとおり、(a)世界の英語教育と文学教育の動向と課題、(b)世界文学を接合した英語教育の可能性、(c)日本の英語教育の課題と文学教育の重要性の各テーマで発表した。具体的には、(a)香港で開催された国際カンファレンス“The Future of English in Asia: Perspectives on Language and Literature”、(b)LibrAsia2013という国際カンファレンス、(c)日本英文学会第85回全国大会シンポジウムで発表を行った。また、授業案の素案を作り、言語教育EXPO2014等で成果を発表した。論文としては国際雑誌に2本、国内雑誌に1本、また共著書1つにまとめた。
1: 当初の計画以上に進展している
英語教育と文学教育の融合の必要性について、理念先行ではなく、また教養派と実用派の議論を超克すべく、実社会での聞き取りというプラグマティズムの立場から考えること、そして、その結果を踏まえて英語教育と文学教育を融合する教育原理、ならびに授業案を作ること、その際に、「世界文学」という新しい文学研究・教育の知見から考案することを目的としたが、初年度に計画した内容ならびに成果発表は全て計画通り遂行できた。教育原理を作る基盤として、日本文化に生きる者が英語学習において英米文学を英語で読む意義に加えて、具体的にどう読むのかということを考えねばならなかったが、世界文学のアプローチを日本に応用した形で結論を導き出すことができた。また、具体的な授業案は2年目に具体化する予定であったが、初年度に素案を作り、一部授業を行い、その成果を発表することもできた。社会からの要求ならびに英米文学を読む文学的意義を踏まえ、英米文学を教材として、どのような英語の授業を行えば、新しい英語学習として有意義なものとなるのか、授業での成果を踏まえて、素案をまとめて発表したが、この発表を通して、実用口語英語偏重気味な世論の方向性を変えられるような動きも出ており、現時点では計画以上に進展していると言える。
二年目は、初年度に続き、英語教育と文学教育を融合する意義について、その実証性を高めるべく、幅広い職種の人々に聞き取り調査を引き続き行っていく。また、世界文学の理論をさらに研究し、初年度に行った原理的研究の精度を高める。二年目に予定していた授業案作りは、初年度にその素案をまとめることができた。これを、さらに改良し、より効果的なものを作っていく。具体的には、英語力とキャリア系のビジネス&マネージメント知識と文学の知見を融合する意義を学習者が深く理解し、それぞれの力をバランスよく養うことのできる全人的な発達を図る授業案であり、頂上タスクを工夫し、文学を読むことで養われた知見や力を生かして、キャリアや実社会での各場面に対応できる英語の授業案である。成果発表は、学会や論文、著書等を通して行っていく。
すべて 2014 2013 その他
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片平
巻: 49 ページ: 刊行遅延、印刷中
Lit Matters: the Liberlit Journal of Teaching Literature
巻: 1 ページ: 印刷中
Journal of East-West Thought
巻: Fall Issue, 3 (3) ページ: 107-126
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