研究課題
最終年度は、英語教育に文学を取り入れる意義と文学の役割、またその原理ならびに具体的な方法論の考察を行った。言葉を用いるということには、(1)字句がわかる、(2)字句をもって何かを伝えたり新たな知識を得る、(3)字句をもっていい点と課題点を判断するという3段階があり、数値測定による結果を目指す英語教育は(1)に留まるものとなり、言葉で伝えたり得たりする内容の質や方法、すなわち(2)や(3)をもって(1)もまた向上する点が見落とされている。(1)が重視されるのは世界中で問題視される「職業教育主義」にもある。同教育は逆説的にも「働けない人」を育てる可能性が高い。職業教育主義は、仕事に役立つか否かといった視点から教育が行われるため、他者の幸せへの視線を奪う。よって働く喜びや、自分の仕事への振り返り、つまり批判的思考や倫理への意識を希薄にもする。こうした原理的課題の克服の範をアメリカのロースクールにおける「文学運動」(法学を学ぶ人が法律を仕事とする人のしていることを批判的に描いた文学を授業で読む)に求めた。各専門分野に関する人間像が描かれた文学を用い、専門分野の単語力等を身につけつつ、国境を越えて読まれる文学がなぜ国境を越えて読まれ得るのか、翻訳可能性(ヒューマン・ユニバーサル)を考えるという世界文学の原理を用いた授業を行い、仕事をすること、また仕事をする自分のあり方、いかに他者が幸福になるのかをグローバルな視点から考えさせ、英語でプレゼンテーションやディスカッションをさせる。また文体面に見られる翻訳不可能性を考えることで、英語の表現や文法(認知を含む)を深く学ばせる。職業教育主義的英語教育の問題は、学生へのアンケートから英語ネイティブスピーカーの授業にも言えるほか、他国にも言えることがわかった。こうしたことから、研究成果を国内外の学会や書籍、論文等で広く発信した。
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文体論研究
巻: 62 ページ: 17-40
Journal of East-West Thought
巻: Summer #2, Volume 7, June 2016 ページ: in print
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