本研究では、高専生が身につけるべき英語専門語彙を、その専門科目の学習状況に合わせて適切に提供するシステムを構築することを目的とする。今年度は、当初の予定では、その配信システムを専門家の助言を得ながら構築する予定であった。しかしながら、諸般の事情により、その実現までは至らず、引き続き専門分野の論文に特徴的に表れる表現を実データを基に分析し、その成果を学会での口頭発表や論文として報告した。具体的には、工学系英語学術論文における分詞(特に日本人が誤りやすい懸垂分詞(dangling participle)の用例)に着目して分析・考察を行った。懸垂分詞は独立分詞構文で主語が表されないものを言い、原則として文法的には誤りとされることが多い。しかしながら、実際にはアメリカ英語を母語とする研究者が書いた工学系の英語学術論文でも懸垂分詞の用例を拾い上げることができ、母語話者にとっても使用が困難な文法項目の1つであることが明らかになった。また、共起する動詞によっては懸垂分詞が出現しない場合もあることも明らかとなった。したがって、専門英語の指導では、ネイティブの書く論文にも誤用が含まれているという実情も踏まえて指導していくことが重要であるということが示唆された。今後の課題であるが、これまでの研究成果を実際の英語専門語彙指導やアカデミックライティング指導に生かせるようなシステムを構築し、実際に学習者に使用してもらい、より実用的かつ有効なシステムを実現することが挙げられる。
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