研究課題/領域番号 |
25370683
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
吉岡 貴芳 豊田工業高等専門学校, 電気・電子システム工学科, 教授 (30270268)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多読 / 英語 / ICT / アイマークレコーダ / 停留運動 / 読み滑り |
研究実績の概要 |
昨年度に続き,学習状況の分析のために多読授業2年目および3年目の学生約100名の学習記録を収集した。また,長期に学習を継続でき十分な読書量があっても,読書レベルが向上していない学習者がいることがわかった。このような学習者は,内容をわかったつもりで読み飛ばしをしているため,内容をほとんど理解していない「読み滑り」という状態であることがわかった。さらに学習状況を詳細に分析したところ,学習記録に難しいレベルの図書を読んだ記録がある一方で,よりやさしいレベルの図書を十分に読まずにいることがわかった。 そこで,読み滑りの状態を客観的に判定することを目的に,英文を読む際の眼球運動をアイマークレコーダにより測定することで、英文読解能力と眼球運動の関連性の調査を行った。今年度は,評価方法を検討するために,読書中の停留時間の分布に着目して,留学経験のある学生数人を対象に分析を行った。 また,学習が促進するきっかけとなる要因を調べるためにアンケートを実施した。自由記述として得られた回答には,教員の支援によるもの,学習者自身の内的な動機付けによるもの,検定試験の得点向上を目指すなどの功利的な動機付けによるものがあった。特に,英語の学習というよりも,読書そのものの楽しさによるものが学習を促進するという記述が多く見受けられた。 昨年度の書評から作成したジャンル別単語データベースの前処理としてTF-IDF法による単語の重みを利用し,精度向上と前処理の自動化を図った。 さらに,将来的に地域図書館を利用する社会人へのサービス提供を考慮し,今年度は地域図書館に所蔵されている英文多読用図書の書誌データの収集を,外部業者の協力を得て行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は,一部の学習者の状況を分析した際に明らかになった「読み滑り」に焦点を当てた分析や評価方法の検討を重点的に行うよう研究計画を変更した。読み滑りを放置しておくと,教授データベースが十分に機能しないこともあり得るため,読み滑りを判定し,適切にシステムから介入する方法を考案する必要があると考えたためである。その結果,内容理解度評価のためにアイマークレコーダを用いた客観的数値と被験者の自己評価から,滑り読みを判定できることが示唆された。 しかし,約100名の学習状況の分析ができなかったため,それに伴う学習者の学習パターンや教員の介入による学習継続の要因や,学習意欲消滅の要因を分析することができなかった。そのため,教授モデルの分析およびシステムに載せるフォーマットの開発ができなかった。 また,PC用のWebベース英語多読学習支援システムがハードウェアの故障のため,利用できなくなってしまった。そのため,同システムの改良を当初平成27年度に行う予定であったが,システムの再構築を行うという方針に変更し,外部業者との打ち合わせを開始した。なお,スマートフォンアプリでは読書の記録機能実装を目的に,アプリとWebサーバおよびデータベースとの連携について開発を行ったが,実装までには至らなかった。 学習を促進するアンケートにおいて得られた自由記述から,読書そのものの楽しさによるものが学習を促進するという記述が多く見受けられたが,これらを類型化するまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
アイマークレコーダを用いた停留時間の測定では,読み滑りの評価方法の検証を行うとともに,昨年度から計測を開始した,読みの経年変化を分析することを目的とした同一の学習者達が多読学習の1年目と2年目とで比較を行う。 また,昨年度できなかった約100名の読書記録を分析する。特に,読書レベルが向上していない学習者を中心に質的・量的に分析し,読み滑りの原因となっている学習行動を特定する。また,学習の継続の要因を分析するために,教員の介入方法やタイミング(教材レベルの選択アドバイス,学習者の嗜好にあった図書の推薦など)を分析する。 図書推薦のアルゴリズム開発には,書評から単語データベースを作成する際に,word2Vecというツールを用いることとし,推薦の特徴について分析を行う。 さらに,収集した教授モデルや学習状況の分析結果をもとに,教授モデルをデータベースとしてシステムに載せるフォーマットを平成28年度中までに完成させるために,今年度中にはPC版のWebベースシステムを,外部業者とともに再構築する。また,スマートフォンによる読書記録・図書推薦システムの実装も,外部業者と共同でWebベースシステムの再構築と同時に,平成27年度中に開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
PC用およびスマホ用の英語多読学習支援システムの再構築のため費用が必要となる。また,研究成果を日本多読学会,Japan Association for Language Teaching (JALT),および第3回世界多読学習会議(The 3rd Extensive Reading World Congress)などでの報告と情報収集のために旅費および参加費が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画は,次年度使用額が生じた理由に記載したとおりである。 なお,研究成果の報告は平成27年度および平成28年度の国際会議にて発表する予定である。
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備考 |
昨年度報告した「英語多読学習支援システム tadoku navi 」は、ハードウェア故障のため、現在は閉鎖してる。
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