「英文読解ができない,英単語・英語例文が覚えられない,授業の速さについていけない」などの困難を抱える複数の学習者に行ったWAIS-Ⅲ(ウェクスラー成人知能検査)の結果を分析すると,共通して「処理速度,符号・記号,数唱」の能力が顕著に弱いということが観察できた。これが言語学習にどのように影響しているのかについては,次のようなことが仮定される。 ・「符号・記号」の得点が低い ⇒ 運動協応,視点移動との関係,抽象性に弱い=書く速度と正確さに影響が出やすい,言語能力,曖昧性への忍耐力の弱さ,行間を読むことの難しさ, トップダウンの情報処理能力の弱さ ・「処理速度,数唱」の得点が低い ⇒ 作動記憶の弱さ=情報保持力の弱さ,読解力の乏しさ こういった分析結果を「言語学習適性-音韻符号化能力,文法感覚,帰納的言語学習能力,暗記学習」の観点から考察し,英語学習の改善につながる具体的な指導法,および学習法を提案し,そして,英語学習に困難を感じる学習者には,どういった特性があるのかを明らかにした上で,さらにそういった特性を補って英語学習の改善につなげるための具体的指導法,学習法を提案することを試みた。本研究では,心理アセスメントの結果をある一定量集積し,それらを分析したものをもとに遂行していくことを計画していたが,個人情報保護等の問題より,十分なデータ数を集めることが困難となった。そこで,それを補填するものとして,感覚優位性,言語学習特性といった学習者の持つ能力を計測し,そのデータを取り込んでの研究とした。
|