研究課題/領域番号 |
25370687
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
大場 浩正 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (10265069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 協同学習 / プロセス・ライティング / ライティング能力 / 流暢性 / 正確性 / 複雑性 / テキスト・マイニング |
研究概要 |
本年度は,協同学習を取り入れたプロセス・ライティングに基づく英語ライティングに関するデータの分析を行った。大学1年生34名(協同学習グループ17名,伝統的学習グループ17名)を対象に,学習者の英語ライティング能力(流暢性,正確性,複雑性および全体的な評価)が,伝統的なグループ活動と比べて違いがあるのか,さらに,トリートメント後の自己評価において両群に違いがあるのかを分析した。 トリートメントとして,2回の授業である1つのテーマについての英作文を4人グループのピア・レビューを通して書いた(6週にわたり3つの英作文を作成)。協同学習グループでは,Johnson et al.(2002)の協同学習の基本的構成要素を組み込んだが,伝統的学習グループには「協調の技能」等,小集団対人技能の指導はなく,また目標設定と振り返りにおけるシェアリングも設定しなかった。トリートメントの効果を検証するために6回の活動の前後にライティング・テストとアンケートを行った。 結果として,流暢性は,協同学習グループの方が伸びる傾向があった。しかしながら,正確性と複雑性に関しては,両グループに大きな差はなかった。流暢性を伸ばそうとした結果,正確性と複雑性が伸びなかったのではないか。全体的な評価(内容,構成,語彙等)では,協同学習グループの方が伝統的学習グループより評価が高い傾向があった。また,トリートメント後の自己評価における自由記述をテキスト・マイニング(キーワードの頻度)によって分析した結果,「英語ライティング能力に関して」と 「ライティング活動(下書きと清書)に関して」は両群に大きな違いはないが,「目標設定,振り返り,アイディアマップに関して」 「ピア・レビュー(学び合い)に関して」「授業全体と授業以外に関して」においては協同学習グループの方が効果的であったことを示す語の頻度が高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,当初,英語スピーキング・データ分析の最終チェックとピア・フィードバックにおける相互行為のプロトコルの作成、及び英語ライティング・データの整理を行う予定であった。しかしながら,データ分析補助者の確保に困難を生じ,英語ライティング・データの整理と2年目に予定していた英語ライティングにおける流暢性(総単語数等)・正確性(誤りのないT-unitの割合など)・複雑性(統語的)の伸長の分析(協同学習グループと伝統的学習グループの比較分析)と考察,及びトリートメント終了後の学習者の自己評価(自由記述)のテキスト・マイニング分析と考察を先に行い,その成果を国内の英語教育に関する中心的な学会(全国英語教育学会及び大学英語教育学会)で発表した。 上記の様に,英語スピーキング・データ分析と英語ライティング・データ分析の予定年度を入れ替えた形になったが,この部分では研究計画の遅れはないと考えられる。しかしながら,協同学習を取り入れた英語スピーキング活動あるいは英語ライティング活動におけるトリートメント時のピア・フィードバックの相互行為プロトコルの作成(書き起こし)と質的分析に着手することが出来なかった。従って,「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
第1に,調査参加者(33名)の英語スピーキング・データにおける流暢性(発話数など)・正確性(誤りのないAS-unitの割合)・複雑性(語彙的・統語的)の伸長に関する分析の最終チェック(協同学習グループと伝統的学習グループの比較分析や統計的処理等)と考察を行い,研究成果を全国英語教育学会で発表する。また,協同学習を取り入れた英語スピーキング活動としてのインフォメーション・ギャップ・タスク活動(絵の間違い探し)において気づいたこと(言えなかった英語表現や文法の誤り等)に対して行ったピア・フィードバック時の相互行為を書き起こし、そのプロトコル作成する。 第2に,英語スピーキング活動と同様に、協同学習を取り入れた英語プロセス・ライティング活動において気づいたこと(書けなかった英語表現や文法の誤り等)に対して行ったピア・フィードバック時の相互行為を書き起こし、そのプロトコル作成する。 第3に,英語スピーキング活動と英語ライティング活動におけるピア・フィードバック時の相互行為を、そのプロトコルに基づき質的に分析する。分析の視点として協同的(あるいは排他的)相互作用(人間関係や役割)と建設的相互作用(自他の認知的活動)を用いてグループ内談話を分析する。さらに、その分析結果に基づき、後の新たなスピーキング活動とライティング活動におけるパフォーマンスの分析を行い、学びの質が深まったかを考察する(協同学習グループと伝統的学習グループの比較を行う)。質的な分析に関しては、グループ内談話におけるキーワードの抽出とその頻度、また、キーワード同士の結びつきの強さや出現の文脈を、テキスト・マイニングを用いて分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度,助成金はほぼ予定通り使用したが,少額(1,524円)が残ってしまった。従って,無理に使用せず,次年度に凝り越すことにした。 物品費に繰り越して使用予定。
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