研究課題/領域番号 |
25370690
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
深澤 清治 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00144791)
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研究分担者 |
鬼田 崇作 広島大学, 外国語教育研究センター, 准教授 (00611807)
前田 啓朗 広島大学, 外国語教育研究センター, 准教授 (10335698) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中間言語語用論 / 言語喪失 / 反応時間 / 正確さ |
研究実績の概要 |
平成27年度においては,昨年度から開始した調査を継続し,データの分析と研究成果の発表を行った。本調査の目的は,留学からの帰国後,どの程度語用論的能力が維持されているのか,あるいは失われているのかを明らかにすることである。本調査の対象は,平成26年4月から8月まで約4ヶ月間,英国の大学へ留学した日本人の大学二年生22名であった。データの収集は,平成26年度に行われており,留学前(平成26年4月),留学中(平成26年7月),留学から帰国半年後(平成27年2月)の3回,データを収集した。データの分析に関して,留学前と留学中のデータの比較は平成26年度中に行っており,今年度のデータ分析は留学中と留学から帰国半年後の比較であった。 調査に用いた材料は,(1) 社会的立場が同じ人に対する適切な発話,(2) 社会的立場が高い人に対する適切な発話,(3) 社会的立場が同じ人に対する不適切な発話,(4) 社会的立場が高い人に対する不適切な発話,の4種類の発話であり,それぞれの発話に対する受容性判断(acceptability judgment)の正確さと速さを分析対象とした。 分析の結果,(1) や(2) などの適切な発話においては,受容性判断の正確さは概ね維持されており,また,その判断の速さも維持されていることが明らかになった。他方,(3) や (4) などの不適切な発話においては,特に(3) の発話において受容性判断が不正確になったが,判断の速さはある程度維持されていることが明らかになった。さらに,留学中の反応時間データに比べ,留学後の反応時間データに大きなばらつきが見られたため,変動係数(coefficient of variation)を用いた追加の分析を行った結果,(1) から(4) の多くの発話において,変動係数の上昇が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画は,平成27年度の主な計画として,留学からの帰国後に見られる語用論的能力の喪失を明らかにすることを挙げていた。そのための方法として,平成26年度に収集したデータを分析し,研究成果をイギリス応用言語学会で発表した。論文は投稿中であり、査読結果を待っている状態である。 以上のことから,当初の計画通り,本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,これまで研究成果を統合し,研究成果の報告を行う予定である。また,必要に応じて追加のデータを収集する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった備品が入手困難であったため。 本研究の成果発表としてよりふさわしい学会が次年度に海外で開催されるため、そのための発表および投稿費用として予算の繰り越しを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
代替の備品を購入する予定である。また、学会参加については、すでに英国応用言語学会に研究発表申込みを行い受理されたため、平成28年6月に発表予定である。
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