研究実績の概要 |
「ランゲージング」(Swain, 2006, 2010)とは外国語学習者が疑問に感じたことや自らの言語使用を振り返る際に、それらについて話したり書いたりすることで問題を解決しようとすることにより理解を深めていく学習プロセスであり、これまでに口頭ランゲージングに関しては学習促進効果が多数報告されている。しかし、その筆記版である筆記ランゲージングに関する研究はほとんど行われていなかった。そこで、本研究では筆記ランゲージングに焦点を当て、その学習促進効果を探った。 総括の1年と位置付けた最終年度の3年目には、1年目・2年目に行った筆記ランゲージングの学習促進効果を検証する2つの実験結果を詳細に分析し考察を加えた。両実験とも筆記ランゲージング効果は英訳テスト(産出課題)と多肢選択式文法テスト(認識課題)の2種類のテストで判断し、実験参加者を筆記ランゲージング有群・無群に分けて、両群のテスト結果を比較、検証した。両実験共に、選択式テストでは差が無いものの、英訳テストでは筆記ランゲージング有群のテスト結果が無群よりも有意に高いとう結果が得られた。これは筆記ランゲージング効果を示唆し、これまでの口頭ランゲージング研究の結果とも共通するものである。しかし、なぜテストによって差が生じたのか、参加者によって学習効果に差があるのかなど今後更に取り組んでいかなければならない課題も浮上した。 これらの結果は国内外の学会(第41回全国英語教育学会熊本研究大会・Second Language Research Forum (SLRF) アトランタ大会)で口頭発表を行い、本研究課題の成果を広く発表するとともに、発表参加者から有意義な意見や今後の研究につながる助言を多数得ることが出来た。また、実験結果をもとに論文を執筆して国際雑誌に投稿し、年度末に出版された(System, Elsevier出版)。
|