研究課題/領域番号 |
25370697
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
千葉 克裕 文教大学, 国際学部, 准教授 (50352547)
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研究分担者 |
横山 悟 千葉科学大学, 薬学部, 准教授 (20451627)
吉本 啓 東北大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50282017)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 第2言語習得 / MEG / 語彙処理 / 信号源解析 |
研究実績の概要 |
前年に引き続き、MEGデータの信号源解析について研究を進めた。前年まではBESAなどに変わる安価で入手可能なソフトとしてMATLABおよびSPM8による解析方法を模索していたが、Brainstormというソフトウェアによる解析が可能となり、その操作手順の確認を行った。また、Brainstorm用にデータを書き出す作業が必要となり、東北大学加齢医学研究所にて必要なデータの書き出し作業を行った。残念ながら解析を完了するには至らず、データの下準備の段階に留まっている。 継続的な課題として、第2言語語彙処理における母語使用プロセスを解明するための翻訳課題実験のデザイン構築のために、多くの文献に当たり、そのロジックの構築に努めている。単なる翻訳課題実験では、母語想起後のマッチング反応しか観察出来ないというハードルを越えるために様々な角度から検討した。 また、これまでに得られた行動データの分析による知見を援用し、多読学習によるリスニング力の向上の要因を考察した。多読学習では、平易な英文を大量に読むことにより語彙処理に於ける音韻処理プロセスが加速すると考えられる。当該研究においてもCASECスコアによる分析(n=27)でリーディング/リスニングスコア共に多読前後で有意な差が確認され(p<.01)、脳内における音韻処理のスピードアップがリスニングプロセスに於いても効果を発揮したと推察された。読解による語彙処理の訓練が聴解力の向上にどのように貢献するかが、神経言語学的考察を加えることで明らかにされたことは、1つの成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
依然としてMEGを使った第2言語処理研究は極めて少なく、その解析方法も確定しているとは言いがたい状況にある。そのため信号源解析の方法については、使用するソフトウェアもいろいろと試行する必要があった。 また、神経言語学の知見を第2言語習得理論へ援用するために、多くの先行研究から考察する必要があり、上述したように当該テーマに関する先行研究がほとんどないことから研究遂行に遅れを生じる最大の原因となっている。 追加の実験を計画するに当たっても、MEGによる分析では、fMRI画像と合わせてデータを取る必要があるが、研究協力を得ている東北大学加齢医学研究所でのMRI実験が立て込み、実験施設利用日を確保することが困難であった為。
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今後の研究の推進方策 |
(1)信号源解析にしようするソフトウェア(Brainstorm)のマニュアルの全文を翻訳することも含め、正しい解析方法の習熟と迅速なデータ分析の手順を確立する。 (2)刺激語提示と同時に翻訳処理を行わせる実験のデザインを確立する。現段階では訳語提示語の正誤判断の域を出ておらず、母語想起後のマッチング反応しか観察出来ない。この問題を解決できれば、第2言語語彙処理において初級学習者が母語を介して意味理解を行っているという仮説を証明するとともに、新たな実験デザインを提案することで今後の神経言語学研究に大きく寄与できる。 (3)翻訳課題による予備実験を行い、データ解析の精緻化と今後の実験デザイン構築を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れと研究協力を得ている東北大学加齢医学研究所での実験施設利用日を確保することができなかったために、予定していた実験ができず刺激提示用PC、被験者謝金、および実験経費の支払いが起きなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は刺激提示のための高性能ノートPCおよび、関連ソフトウェアの購入を計画している。また、予備実験のための旅費、被験者謝金として支出予定である。さらに余裕があれば生理化学研究所による脳磁図研究のための実験技術トレーニング費用も支出予定である。
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