研究課題/領域番号 |
25370702
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
廣森 友人 明治大学, 国際日本学部, 准教授 (30448378)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第二言語習得 / 個人差 / 動機づけ / ダイナミックシステム理論 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目標は,動機づけが変化・発達するシステムに関して,具体的な視点(モデル)を導き出すことである。そこでは動機づけの向上だけではなく,低下のプロセスも明らかにすることにより,動機づけの変化・発達をより全体的・立体的に捉えることを目指す。このような目標を達成するために,今年度(平成27年度)はよりマクロな視点に基づき,調査の計画・実施を行った。
具体的には,日本人大学生(計70名)を対象とし,彼らに中高大の英語学習について振り返り,各学年における動機づけの強さを6段階(0~5)で回答してもらった。その結果,全体の平均としては,中3,高3において動機づけの顕著な上昇が見られた。その一方で,個々の学習者の発達プロセスに注目すると,先述した全体の平均とまったく同じ変化を辿った学生は誰一人として存在しなかった。我々はとかく「平均的な学生」をイメージしながら授業をしたり,テストを作成したりするが,実際にはそのような抽象的にモデル化された学生は我々の教室にはいないのかもしれない。
そうは言っても,個々の学習者を一人ひとり見ていくことは煩雑すぎるといった批判もあるだろう。では,現実的な解決策としてどのような方法が考えられるか?1つの解決策はある程度類似した学習者ごとにグループ分けをしてみるといったことが挙げられる。例えば,今回の大学生70名はクラスター分析という統計手法を用いた分析の結果,傾向の異なる3つのグループ(ジグザグ群,低-高群,高-高群)に分類できることが分かった。70名すべてに対して,個別の指導を考えるのは難しいかもしれないが,いくつかの類似したグループに対する学習支援であれば教室でも十分に実施が可能であろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも述べたように,これまでのところ動機づけの変化・発達プロセスについてはある程度まとめられつつある。その一方で,本研究課題ではもう1つの目的として,動機づけに影響を与える背景要因の特定を目指している。こちらについては,すでに動機づけの発達プロセスと同時に,そのようなプロセスに影響を与えた要因についても調査協力者に回答してもらっている。現在は,動機づけが変化した理由・原因について,動機づけが上がった時,下がった時それぞれの観点から具体的に記述してもらったデータを複数の専門家の協力のもと分類している。この作業をコンピュータによるテキスト分析なども利用して多面的な観点から行っているため,予想以上に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,動機づけが変化した理由・原因について,動機づけが上がった時,下がった時それぞれの観点から具体的に整理・分類していく。予想される結果としては,異なる動機づけの変化・発達パターンを示した学習者は,動機づけが変化した理由・原因としてそれぞれ異なった要因を挙げるものと考える。
さらに,得られたデータの解釈にあたっては,目前の学習者から得られるボトムアップ的な視点と,動機づけの理論や研究から得られるトップダウン的な視点をバランスよく用いたいと考える。つまり,ボトムアップ的な視点からは,動機づけ変化の特徴をある程度明らかにすることができるが,そのような変化が「なぜ」起こるのかといった部分に対しては,必ずしも十分な説明ができるわけではない。したがって,これまでの動機づけ研究の成果に照らし合わせて得られた結果を複眼的に解釈することにより,より深い洞察につなげたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,平成27年度前期に調査結果の多角的な分析・評価を終え,同後期に得られた成果・知見を各種学会で報告,学術論文としてまとめる予定であった。しかし,先述したように,調査等によって得られたデータが量的,質的に多岐にわたり,さらにその分析についても量的,質的に多角的な観点から行っているため,予想以上の時間を要することとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
すでにデータの収集は終えているため,今後は早急に分析・考察を終え,各種学会での報告に伴う旅費,また学術論文として投稿・掲載するための費用として研究費の支出を予定している。
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