研究課題/領域番号 |
25370716
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤濤 文子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (40199352)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 翻訳 / 非言語要素 / 日独英比較 |
研究実績の概要 |
グローバル化とマルチメディア化が進む現代において、異文化間のコミュニケーションのあり方が多様化してきているが、何を言語化し、何を言外の非言語チャネルで表現するかは言語文化により異なる。それについて、実際どうなっているかを観察して記述することから得られる知見が、異文化間コミュニケーションを成功させるうえで重要であるとの考えから、視聴覚メディア翻訳の日独英比較を研究対象とした。ただし、当初の問題意識から明らかなように、単に映画に代表されるような視聴覚メディアに留まらず、言語以外の視覚/聴覚要素を用いた、絵本、マンガ、雑誌も視野に入れて、日本国内およびドイツで入手できる資料の収集を行った。その結果、前年度の国内での収集をさらに発展させ、映画・絵本・マンガ・雑誌の各ジャンルごとの作品収集をかなり充実させることができた。 さらに、翻訳における言語以外の要素を考えるに当たり、パラテクストという観点から翻訳を考察することが必要であることを確認し、文学作品のドイツ語原著と英語版および日本語版の比較分析をおこなったところ、挿絵の扱いに大いに差異が認められた。その分析結果を「翻訳とパラテクストとしての挿絵」という論文で発表することができた。 また招待講演(立教大学)を依頼された機会があったため、「視聴覚翻訳における非言語要素の役割」をテーマとして設定し、映画、マンガ、絵本、挿絵、雑誌などの各ジャンルの非言語要素が翻訳でどのような役割を果たし、どう扱われているかについて、多くの例を取り上げながら整理することができた。その際、国内外の翻訳理論および視聴覚翻訳を専門とする多くの研究者たちと意見交換することができた。こうした成果は今後の研究を進める上で大いにいかせるものと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度に引き続き、映画・絵本・マンガ・雑誌の各ジャンルごとの作品収集をかなり充実させることができた。ただ、作品収集とその読み込みに時間がかかってしまい、当初予定していた映画ジャンルに特化した日独英比較の分析をするまでの余裕がなかった。しかし、翻訳における言語以外の要素としては、パラテクストが重要であり、26年度は映画の分析こそできなかったものの、それに代わり、パラテクストに焦点を当てて挿絵を比較した論文を発表することができた。また招待講演で、翻訳における非言語の役割について整理することができ、こうした成果は今後の研究を進める上で大いにいかせるものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
資料収集はほぼ終わったため、次年度は遅れていた映画ジャンルの作品分析を本格的に行うとともに、絵本ジャンルの分析準備にも取り掛かる。その後は、絵本、マンガ、雑誌の比較分析へと順次進めていく。そして最終年には、全てを総括して、全体の意義とまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料の入手時期が若干ずれ込んだため、資料整理に人件費がかかるところを、雇用する時期を逸してしまったため。年度末にはほぼ揃ったため、今後順次整理していく予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
未整理の資料がたまっているため、次年度に2年分の雇用をして整理する予定である。
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