研究課題/領域番号 |
25370724
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
藤巻 光浩 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (50337523)
|
研究分担者 |
山脇 千賀子 文教大学, 国際学部, 准教授 (40302343)
青沼 智 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (50306411)
森泉 哲 南山大学短期大学部, その他部局等, 教授 (60310588)
福本 明子 愛知淑徳大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70387835)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 公共的理性の使用 / イソクラテス / 記憶形成 / 多文化社会を生きる主体形成 |
研究実績の概要 |
本研究は、二年目に突入し、計画では「試論提示期」となっている。これを受けて、各研究者は試論を試みた。 藤巻と福本は、日本コミュニケーション学会(CAJ)の年次大会(6月)において行われた、ダグラス・ラミス氏と議論を交わすパネルにおいて試論の一部を提示した。中でも、藤巻は主権者(王)を縛る、憲法のような機能を果たす法の成り立ちを、古典期ギリシアにおけるイソクラテスによる「王への発話(バシリコス・ロゴス)」に求めた。この伝統はレトリックの伝統的なスピーチジャンルの一つであり、主権者が人々の声を取り込むための条件、つまり公共性の重要さを説いている意味において、公共的理性の使用に関わる重要な論点を、シティズンシップ教育の在り方に提示している。 山脇は、シティズンシップ教育と深く関係する教科書を刊行する中で、多文化社会を生きる主体形成のあり方を論じ、一人ひとりが「市民」となるための解決方法を模索した。福本は、原爆ピアスを例にとり、核の記憶形成において、ナショナル・アイデンティティの過剰な影響について論じた。 また、CAJ中部支部大会を利用し、本研究チームは研究会を開催した。外国籍の子供たちを、大学教育を通じてどのようにエンパワーできるのかを紹介する基調講演、上記の「王への手紙」について議論した柿田秀樹氏の『倫理のパフォーマンス』の合評会、日高勝之氏の『昭和ノスタルジアとは何か』の合評会などを通じ、教育や記憶形成において公共性をいかに担保すべきかを議論した。 今年度は試論提示期とのことであったが、それぞれ具体的な事例・文脈の中で、コミュニケーション教育のあるべき姿や条件を提示していかなくてはならないことを確認した。この意味で、3年目は、より具体的なコミュニケーション教育の在り方を加味してみたい。これに関しては、2015年12月19日にCAJの中部支部大会を利用して研究会を催す予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試論提示期ということで、各研究者が概ね、その報告を行った。そして、研究会も開催し、お互いに研究の向かう方向性を共有している。
|
今後の研究の推進方策 |
すでに記したが、12月19日に研究会を開催し、論文のかたちでお互いにフィードバックを行う。そのために、各自の研究をそれぞれ推進していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
代表者の藤巻が書いている著書の仕上げが大詰めになったため、本研究の予算の執行が滞ったことが大きな理由として挙げられる。急に出版社が決定し、その後編集・校正作業が増えたために、執行ができなくなってしまった。
|
次年度使用額の使用計画 |
新年度、海外調査や報告も取り入れ、効果的に予算の執行を図る予定である。
|