研究課題/領域番号 |
25370725
|
研究機関 | 共愛学園前橋国際大学 |
研究代表者 |
中山 夏恵 共愛学園前橋国際大学, 国際社会学部, 准教授 (50406287)
|
研究分担者 |
栗原 文子 中央大学, 商学部, 教授 (60318920)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 異文化間能力 / 中学英語検定教科書 / 言語教師のポートフォリオ(J-POSTL) / 言語と文化の複元的アプローチ参照枠(FREPA) |
研究実績の概要 |
前年度に行った英語教師の異文化間教育力に対する自信と海外経験の関係性についての分析結果を、AILA World Congress(8月)にて報告した。調査結果からは、主に以下の2点が明らかになった:(1)教員にとって、生徒の異文化間能力(IC)を育成する方法の内もっとも授業に取り入れやすいと感じているのは教材を通じてである(2)海外経験の有無と勤務年数の長さは異文化教育力に対する教員の肯定的意識形成において重要。 この結果を踏まえ、26年度は、教科書を通じ涵養できるICとその実践方法について調査を実施した。その手法としては、国内外の異文化間教育力の指標(主に、FREPAやJ-POSTL)を参考に、授業を通じ育成される重要なIC要素を特定する枠組みを作成し、それを活用することで中学校英語検定教科書を分析した。 結果、文化に関する記述は表層的なものにとどまり、自文化を意識させ相対化したり、異文化と自文化と関連付けたりする内容は限定的であった。一方、学習者のIC育成に深く取り組むことが可能であると思われる箇所も一部見られた。ここから、中学校の限られた言語材料という制約の中でも、本文の内容や質問を工夫することによって深層文化の存在に対する気づきを促すことも可能であることが明らかになった。この結果は、論文にまとめると共に、JACET講演会(1月)でも報告した。 更に教科書執筆者への意識調査を行ってきた研究者や、IC教育の実践者の先生と共に、教科書にみられるICと実践の現状理解を深めるため、2度のシンポジウム(9月と3月)を実施した。この交流を通じ、現職教員のみならず、教科書執筆者間においてもICという概念と育成の方法論が未だ不明瞭であることが課題の一つとして浮上した。これを受け、2015年度は、ICという概念の啓蒙と、授業での実践方法への理解を深める研究を中心に進めたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異文化間教育力基準の開発に際し、昨年度、ほとんど手が付けられなかった文献研究(検定教科書調査)を中心に研究を進めた。まず、国内外の異文化間授業力の指標を参考に、英語の授業を通じ育成される重要なICの要素を特定する枠組みを作成し、それを活用し、英語検定教科書分析を実施した。しかし、ICを促すための授業の在り方を検討する実践例の収集については、予定していたほど進まなかった。その原因としては、教科書分析に予定よりも時間がかかったこと、また同様の関心を持った研究者達との交流を通じ、現状の検定教科書及びその活用に対する理解を深める機会が得られたが、その分、予定より時間を要してしまったことが挙げられる。しかし、「異文化間能力」育成という観点からの検定教科書の理解、及び、今後の教材開発や教員研修への示唆が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
英語教員がそなえるべき「異文化間教育力」を明らかにするため、J-POSTLの文化の項目に注目し研究を進めてきた。しかし、これらの項目を用いた全国調査の結果からは、現職教員の多くがICという概念や育成の方法論について、課題を抱えていることが明らかになった(JACET教育問題研究会、2012)。英語授業を通じたIC育成のためには、教員がJ-POSTLに含まれるICを理解し、授業において実践する方法を理解することが求められる。そこで27年度は、今までの研究成果を基に、教師の自信が見られなかった項目に注目し、その項目で扱われているICを育成するために実践可能な指導について調査することで、文脈化を進める。その方法としては、(1)教科書にある活動を基に例示化する。また、(2)異文化指導を実践している教員対象にアンケートと授業見学を通じて指導法を収集する。このように文脈化を進めることで、日本の文脈に合った異文化間教育力を明らかにし、授業において育成する方法を提示する。加えて、アンケートでは、異文化指導を行っている先生方の意識についても調査することで、教員研修への示唆を探りたい。 研究の変更点としては、調査範囲を当初は初等中等教育を網羅的に行うことを計画していたが、現状として、教科であり、検定教科書や付属の教材や実践等に関する多くの蓄積がすでにある中等教育に焦点を絞りより深い理解を目指して研究を進めることとした。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由としては、前年度のAILA World Congress(オーストラリア)での研究発表に要する諸費用が、時期的な問題から見積額よりも多くかかり、そのため、当初使用を予定していた分担者の国内の学会発表及び宿泊費分に十分な財源が確保できそうになかったことから使用を中止したためである。分担者分の残金は、予定していた授業見学を来年度に変更したことから生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
ここから派生した余剰額については、今年度の成果報告のための学会発表及び異文化間能力を伸長する授業の実践例を収集する際の交通費として利用したい。
|