研究実績の概要 |
最終年度には,英語教員が授業を通じて生徒の異文化間能力(IC)を育成する方法に注目した。前年度に,優れたIC教育を実践する英語教員に聞き取り調査をした結果,IC授業の実践には,教員自身によるICの概念やその指導法に対する理解が重要になることが示唆された。そこで,英語授業で扱えるIC要素を教員にとって理解しやすくなるよう文脈化を試みた。その方法としては, J-POSTL(『言語教師のポートフォリオ』:JACET教育問題研究会, 2014) に収録されているIC授業に関する項目に含まれる難解な用語や概念を取り上げ,FREPA(『言語と文化の複元的アプローチ参照枠』:ECML, 2012)等の諸文献を用い解釈を付したり,教科書調査の結果(中山・栗原,2015)を利用し,同様のIC要素が促されると判断される活動やトピックを例示した。
また,IC指導の計画・実施法を検討するため,追加で2校に聞き取り調査を実施したり,IC指導の研究者達とのラウンドテーブルを開催したりした。結果,体系的なIC指導の計画・実践には,J-POSTLに加え,より具体的な授業実践に関する枠組みがあると効果的であることが示唆された。得られた成果は、現職教員対象のワークショップにて報告すると共に,指導法の更なる改善のためのフィードバックも頂いた。
3年間の研究を通じ,中学校段階を中心に,現状で扱われている,もしくは扱うことができるIC要素に対する理解が深まった。また,種々のICに関する枠組みの研究を通じて,その概念や指導法に対する理解が得られた。今後の方向性としては,本研究で十分に掘り下げられなかった学校種(小学・高校)に注目し,学習者の発達段階に沿ったIC要素や指導法の研究を推進することで,小中高と一貫した視点にたった異文化指導法の開発・普及へと繋げたい。
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