研究実績の概要 |
公立の教員採用試験の受験者は全国で約18万人である。最終倍率は各教科や都道府県市で異なるが英語科(中・高)の平均採用率は10%台である(文科省、2016)。不合格になった受験者は一年後に再度受験するか英語教員の道を諦めるかの選択に迫られることになる。教員採用試験は受験者の人生に大きな影響を及ぼす重要なテスト(high stakes test)である。このような重要なテストにも関わらず教員採用試験に関する研究は数えるほどしかない。しかもその多くは1次試験に関するものである(Watanabe, 2008)。Akiyama(2016)は評価者の評価の過程を調べるために評価者3グループ(教育委員会関係者・中学・高校英語教師)に模擬授業を採点してもらい、量的分析(ラッシュ分析)と質的分析(シンク・アラウド法、think-aloud method、評価者になぜそのスコアをつけたのかの理由を声にだしそれを録音し分析する方法)を行った。think-aloud 法の分析結果では主に以下のことが判明した。1)すべての評価者は評価項目を同じように使用していない(評価項目をすべて使用していない)。2)評価項目の使用具合と評価の信頼性と採点の厳しさとはあまり関係がない。3)評価者の偏りの理由は二つにまとめられる。一つは評価項目を適切に使用していない、そして評価に対する(教師としての)教育的価値観と関係がある可能性が高い。上記のthink-aloud法の結果は評価者の「評価者の認知」をある程度明らかにしているがさらなる課題が見つかった。例えば、教員採用試験の模擬授業にはどのようなルーブリック(評価基準表)が適切なのか?や実際に評価する前に誰が訓練し、どのような評価者訓練が必要なのか、どれくらいの評価者訓練が必要なのかなどである。そしてそのような評価者訓練の結果再度検証することが必要となるであろう。
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