研究課題/領域番号 |
25370743
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
八島 智子 関西大学, 外国語学部, 教授 (60210233)
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研究分担者 |
守崎 誠一 関西大学, 外国語学部, 教授 (30347520)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スタディ・アブロード / コミュニケーション志向性 / グローバル人材 / 異文化接触 / 第二言語習得 / 英語使用不安 / 国際的志向性 / 英語学習動機 |
研究概要 |
研究期間の前半には、異文化対応力の態度面・情意面・行動面の変化を測定する新たなインスツルメントの開発、既存のインスツルメントの改良、ソーシャル・スキル尺度の開発を進めた。その一環として、カナダの研究者を招き、異文化接触状況における質的研究の方法についてアドバイスを得た。また質的方法の研究会などに積極的に参加することで、妥当性のある質的方法の確立をめざした。特にエスノグラフィやナレーティブ・スタディの精密化に加え、ダイナミックシステム理論を基礎にした新たな方法である、Retrodictive Qualitative Modellingについて研究し習熟した。これは、インタビュを中心とした方法であり、これをを異文化接触経験の成果の研究に使う可能性を検討した。 以上の研究方法論に関する研究成果を踏まえ、データの収集を行った。予備的調査として、スタディ・アブロードを一年後に控えた学生を対象にの情意面(コミュニケーション志向性・不安・動機付け)、国際的志向性、国際的関心、エスノセントリズムなど)の質問紙を実施した。またスタディアブロードの準備を目的とした英語ディスカッションセッションを対象に一セメスタにわたる詳細の観察と上記のRetrodiictive Qualitative Modellingを用いて分析するための、記述質問紙とインタビュを実施した。 質問紙調査については、すでに入力を終え、統計解析をはじめている。インタビュについても書き起こしをしたうえでオープン・コード化を終えており、一定の成果を得ている。特に一年間の大学への留学におけるアカデミックな適応に果たす第二言語使用能力の側面特にコミュニケーション志向性について、またその準備のありかたについての示唆が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、グローバル人材養成の必要性が叫ばれるなかで、どのように多様性を受けいれ、他者とのコミュニケーションに開かれた日本人を育成できるのかをさぐることであり、またこの課題に異文化コミュニケーション論と英語教育学という異分野の知見を結集して臨むことである。 研究の進捗状況については、平成25年度に予定していた項目のうち、「異文化対応力の態度面・情意面・行動面の変化を測定する新たなインスツルメントの開発・既存のインスツルメントの改良、ナレーティブ・スタディ、エスノグラフィ、面接法などの方法論における、最近の傾向の把握と、本研究の目的に適した方法論の選定」についてはおおむね計画通り進行した。データの収集についても「長期スタディ・ブロード参加者に対する事前調査(各インスツルメント)の実施」「調査参加者を対象とした予備的面接の実施」については、ほぼ予定どおり実施した。一方同時に収集予定であった、短期留学から帰国した対象に帰国後調査を実施するという点については、研究代表者が疾病のため9月~11月まで2ヶ月間休職したため、実施できなかった。 一方で、面接法などの方法論における、最近の傾向の把握と、本研究の目的に適した方法論の選定を行うなかで、有望であることが分かったRetrodictive Qualitative Modellingについての研究をすすめ、これを使うための観察・面接データを収集できたことは予定を越えた成果であるということができる。全体としては上記に記した理由でやや遅れているものの、総合的に見ると、当初の予定の80~85%は達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、データ収集とすでに収集したデータの分析がある。まず分析についてはすでに入手したデータの解析を進める。5月から7月には、特に本調査に適した質的方法(グラウンディド・セオリ・アプローチなどにもとづく面接のコード化、カテゴリ化の方法)を確定するとともに、先進的な方法であるRetrodictive Qualitative Modelling を用いた分析を実施する。またデータ収集については、長期・短期スタディ・アブロードから帰国した学生を対象にした調査を夏から秋にかけておこなうとともに、留学中の調査 (ナレーティブ、ソーシャル・スキル調査など)を9月から12月にかけて実施する。27年1月から3月には、新たに取ったデータの分析と研究成果の中間発表を行う。さらに必要に応じてフォローアップデータの収集を行う。 計画の変更というほどではないが、英語教育的な課題により重点的に取り組む予定である。具体的には、高等教育機関へのスタディ・アブロードの特徴であるアカデミックな適応の問題をより中心的に捉え、対人的なコミュニケーション志向性に加えて、議論などへの参加能力、学術的な場面において英語でのコミュニケーションを積極的に図る態度とそれを支える能力の明確化を行う。さらにそういう態度や能力は留学を通してどれくらい養われるのか、また出発前にどの程度準備できるかについての研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においてデータ収集を予定していた時期に数ヶ月休職したため(疾病のため)予定どおりデータ収集ができなかった。そのため予定していた視察やデータ収集のための国内出張、海外出張の費用や、データ入力・分析に関わる費用を執行することができず、当該助成金が生じた。 平成26年度8月以降にデータ収集を行う。短期スタディ・アブロードについては平成25年、26年と同種のデータを対象を変えて2度採取する予定であったが、対象を多くすることで25年に収集できなかった部分を補充する予定である。平成25年度前半には、一年間のスタディ・アブロードを予定している学生を対象に、コミュニケーション志向性や英語学習の情意的側面などについて良質のデータが収集できており分析も順調に進んでいるため、この部分の研究発表を行う予定である。この部分のデータについては大きい成果が見込めるため、予定を一部変更し追跡データを取る予定である。以上のような研究計画において、データ入力・分析に関わる費用、また研究発表のための国内・海外出張の費用を執行する計画である。
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