研究課題/領域番号 |
25370745
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
毛利 雅子 関西外国語大学, 外国語学部, 講師 (20636948)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 法廷通訳 / 文化の翻訳 / 通訳認証制度 / 通訳人倫理規定 / 裁判の公正さ |
研究概要 |
日本における法廷通訳制度、およびその中でも特に文化の仲介者としての役割論を中心に資料収集、実地調査(法廷見学および自らが法廷通訳人として活動することによって資料や情報を収集)し、海外(アメリカ)での実情調査および法廷見学に赴いた。それらを元に、国内外での研究発表、論文執筆を行った。 具体的には、年間を通じて、幅広い意味での司法通訳・翻訳人を務め、裁判所はもとより、警察・検察・入国管理局・税関での通訳・翻訳業務を行い、それぞれの事案において、各被疑者の出自、犯罪事実、取調べや公判での談話を収集、データを蓄積してきた。 また、アメリカでの実情調査に赴き、連邦政府、州政府、特別区と異なる行政区分毎での司法制度、法廷通訳人の試験、認証、採用制度や運用面でも調査を行い、資料収集およびインタビューを実施した。加えて、実際にワシントン特別区とニューヨーク州(マンハッタン行政区)での法廷見学に行き、被疑者や談話などのデータを入手した。 さらに、国内外での学会において研究発表を行い、各国の研究者および通訳養成機関や派遣機関の担当者と情報交換を行う場を持つようにしてきた。その結果、平成25年度は、合計5回の研究発表を行った。また平成25年度の活動により、平成26年度は既に2回、海外での学会発表が決定している。 加えて、これまでの国内外における調査や資料収集、また自らの通訳人業務から得た資料・情報に基づき、年間を通して論文執筆・投稿を継続している。業績としては、平成26年度になる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度では、出来うる限りの外国人被疑者・証人談話データを収集する予定だったが、想定レベルまでは集まらなかった。これは、平成25年度中に、英語通訳を必要とする被疑者(もしくは英語通訳を必要とする証人が出廷する)事件が多くなかったことが理由である。この背景には、実際には事件として発生しても、諸般の事情により不起訴処分になったり、被害者の希望により起訴を取り下げたりする事案も多く、当初の想定レベルまでの談話が収集出来ていない部分はある。ただ、これはある程度計画当初から想定されていたことなので、平成26年度も継続して談話収集に努めていく。 また、文化の仲介者としての通訳人の役割については、これまでの研究・調査から、幅広い情報を取得、またインタビューも獲得出来ている。特に、通訳・通訳人研究の進んでいるアメリカや欧州については、学会や研究出張を通じ、非常に豊富な情報収集が出来ており、通常の調査や文献研究だけでは得られない貴重な内部資料なども取得することが出来ている。 これらに基づき、海外での実態調査と日本の現状を対比した調査・研究を進めており、更には現在の日本の司法通訳人制度に対する提言、特に文化の仲介者としての通訳人の役割への提言や教育方策、通訳人認証試験制度などへの試案作成にも取り掛かっているところである。特に、基礎言語力、通訳人としての言語運用能力、倫理規定、異文化コミュニケーション理解など、現在の通訳人制度および研修では全く触れられていない部分においての研究調査、提言準備を行うことが出来てきている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度に引き続き、平成26年度も継続して、法廷での談話収集に努めていく。加えて、自らが通訳人となる可能性がある場合には積極的に関わり、談話データ情報・資料収集を務めていく計画である。 また可能であれば、他言語の法廷傍聴にも参加し、文化的背景を伴った日本語談話の特徴も収集していく予定である。 同様に、アメリカ・欧州の通訳人認定・養成制度の調査を行い、その中から特に文化の仲介者としての役割論に注目、日本の現状を鑑みながら更なる提言作成、および通訳人養成教材の作成にも取り組んでいく。 さらに平成26年度も引き続き、国内外での学会発表を実施、特に海外での学会では各国研究者との交流でさらに知見を深め、可能であればインタビューも取る予定である。 それらを積み重ねたうえで、情報を精査し、通訳人に求められる言語能力、文化の仲介者としての役割を提示する。またそのために必要となる通訳人認証制度、養成制度、教育教材の開発を継続的に行っていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外での学会発表および研究調査を進めた結果、旅費が想定以上に必要となったため、平成25年度に200,000万円前倒しで請求したため。 使用計画そのものに変更はない。平成26年度も継続的に談話収集および調査に努めていく。現在までのところ、旅費を含め概算支出枠の見通しが立っているので、計画そのものに支障は出ないと考えている。
|