台湾総督府文書の内容構造を階層別に見ると、①本府たる台湾総督府の文書史料群としての台湾総督府文書、②台湾総督府の附属機関である専売局文書および関係組織である台湾拓殖株式会社の文書、③県(庁・州)などの地方自治体における地方行政機関の文書、④台湾総督府の地方行政機関の下部組織である街庄などの文書で直接住民に係わる文書、の4つの分類に分けることができる。 そのうちの地方行政機関の文書とは、台湾総督府文書に編綴されている引継文書たる旧県文書を指している。この文書は、1901年に地方行政機関が県という大きな組織から庁という小さな組織へと分割される際に台湾総督府へと引き継がれていたのである。さらに、近年、国史館台湾文献館に引き継がれた日本の村文書に相当する台北州の鶯歌庄文書や台中州の内埔庄文書、彰化県の花壇国民学校などの学校の文書などの住民に直接関わる文書なども台湾に現存していることが判明した。 こららの末端機関の文書を分析した結果、県(庁・州)よりも下部組織である街(町)のさらに下部にあたる組織であった庄(村)の末端の組織文書や学校の文書の編綴方法は、案件項目ごとに分類され、年度ごとに分類されて編綴されており、その理由は、直接住民にかかわる組織体であることから、案件が多種多様であり、本府と同様の門類分類が出来なかったと思われる。このことは、本府と地方の文書管理は、収受・回覧・決裁・保存にかかわる基本的なことは同じではあるが、分類方法が全く異なっていたということであり、つまり、中央の組織体と地方の末端組織体とは異なる構造をもった文書群であったことが明らかになった。
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