最終年度は、香取社の神宮寺・寺院関係資料に関する補足調査を進めるとともに、予定通り、研究成果の一部として「香取神宮の神宮寺及び供僧についての基礎的考察」(佐藤博信編『中世東国の社会と文化』平成28年12月、岩田書院)を刊行した。 研究期間全体を通じた成果としては、研究の主なる目的であった、下総国一宮香取社における中・近世の神宮寺や関係寺院等の諸資料を蒐集・整理することは、「香取神宮の神宮寺・寺院関係資料一覧(稿)」(『史流』46号、平成28年3月)として実現できた。また、地域調査をくり返すことで、香取神宮周辺での関係寺院跡の確定が多くできたことも貴重な成果であった。蒐集資料を整理するなかで、明治初年の廃仏毀釈の実態が明らかになると共に、激しい廃仏毀釈運動のなかで、いったん廃棄処分された仏教・寺院関係の諸資料を「購入」することなどで守る活動が他方で行われていたことがおぼろげながら明らかになったことも成果である。 なお、「香取神宮の神宮寺及び供僧についての基礎的考察」では、中世以来の修正会や追な会などの正月行事が、神宮寺が破壊される幕末までは、神宮寺で行われていたことが明らかになったことも大きな成果であった。 なお、廃仏毀釈の実態やその歴史的な意味については、他地域での事例との比較研究も必要となるが、今回の研究において、部分的に研究できたことも成果の一部である。比叡山(延暦寺=日吉大社)での廃仏毀釈は、あまりにも有名であるが、そうした事例との比較研究をさらに続けていきたいと考えている。
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