日本軍のなかのもう一つの軍隊の存在、すなわち他国沿海に出漁する日本人漁業者に対する海軍の平時の保護・警備活動を主題とする。明治初年から日本の敗戦までを対象に、主に日露戦争後のポーツマス講和条約でロシアから獲得した漁業「権益」をテコに北洋漁業が拡大するなかで展開された、海軍による警備の実態とその意味するところを考察する。「満蒙」の「権益」は国策会社としての満鉄に集中していたのが、北洋漁業の主役は日魯漁業株式会社・日本水産株式会社などの民間企業であった。戦後に再開された北洋漁業の「保護」をめぐる問題、シーレーン防衛を名として進められた一九八〇年代以降の海上自衛隊の活動拡大の様相をとりあげる。
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