研究課題/領域番号 |
25370759
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安達 宏昭 東北大学, 文学研究科, 教授 (40361050)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アジア太平洋戦争 / 15年戦争 / 東アジア / 東南アジア / ブロック経済 / 総力戦体制 / 近現代史 |
研究実績の概要 |
本年度は、第一に、戦時期の広域経済圏構想の具体化を担当した大東亜省について、政策文書をさらに調査収集して分析を行った。主に満洲事務局の局長であった今吉敏雄の文書や外務省旧茗荷谷研修所文書における大東亜省の作成文書を分析し、1943年後半の中国の華北地方に対する鋼材、軽金属原料などの増産方策の検討と政策を明らかにした。大東亜省では、この地域の生産隘路のひとつに労働力の不足があると認識しており、その対策として地域外からの食糧供給を行うことを考えていた。このため、「満洲国」からの雑穀の輸入を企図し、対日供給と併せて、「満洲国」における増産対策を実施していった。このように大東亜省は、中央における物資動員計画に必要な資材・原料を、東アジア各地で調達するため、現地での増産対策を計画し実施する役割を担っていたのであり、その実現のために中国と「満洲国」の政策を連関させて立案し、実行に移していたのである。広域経済圏構築の政策は、一地域ごとに施策が実施されていたのではなく、複数の地域を密接に関連させて立案されていたことがわかった。 第二に、「満洲事変」から日中戦争に至る1930年代半ばの広域経済圏構想に関する論文・論説・調査報告について収集を行った。この時期の総合雑誌に掲載された論文をリストアップし収集するとともに、財界や経済団体、南満州鉄道株式会社の調査資料を旧植民関係資料を所蔵する複数の大学図書館においてデジタルカメラで撮影して収集した。その論調における対象地域の変遷は、日満ブロックから日満北支ブロックと拡大しており、主に日満間の問題についての認識から対象地域の拡大が見られることが理解できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主に計画していた戦時期の広域経済圏構想の政策主体となった大東亜省の資料収集とその分析は、概ね順調に進捗し、学会での報告もできた。しかし、今年度予定していた、1931年から1940年までのいわゆる「満州事変」期・日中戦争期における、総合雑誌に掲載された論文のリストアップとその収集・分析については、在職している大学の図書館が昨年度から今年度11月まで全面的な改修工事の影響でそれら雑誌の利用できなかったため、一部しかできなかった。すなわち「満洲事変」から日中戦争期までの雑誌論文については概ね収集・分析することができたが、日中戦争からアジア・太平洋戦争期までの論文は未だ不充分で、おおまかな議論の傾向を把握することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは日中戦争開始後から1940年までの構想に関する議論について、概要把握に取りかかりたい。できれば、そのために当時の論文や報告書などのリストアップやデータベース化を手伝ってもらう研究協力者(大学院生など)の作業量を増やしたいと考えている。そのうえで、日満経済ブロック・日満支経済ブロック・東亜共栄圏経済ブロックなどの構想について、時期に沿って資料収集をさらに図りたい。 また、戦時期の構想実現化に関する政策についての資料調査・収集も継続して行い、戦時末期の政策展開の過程についても詳細に分析することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、在職している図書館が昨年度、急遽、全面的な改修工事に入り、本年度11月まで、整理のために雑誌の利用ができなかったため、雑誌論文の調査の一部しかできず、当初予定していた計画を一部延期させたことと、国内調査を効率的に推進したために伴って発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
延期した日中戦争期の論文・資料についての調査・収集や、さらなる国内調査に必要な経費として、平成27年度請求額とあわせて使用する予定である。
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