研究課題/領域番号 |
25370760
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松尾 剛次 山形大学, 人文学部, 教授 (30143077)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 叡尊教団 / 九州地域 / 畿内地域 / 関東祈祷寺 / 西国 |
研究実績の概要 |
奈良西大寺叡尊をいわば開祖とする叡尊教団は13世紀後半から15世紀において、ライ病患者の救済から川・橋・道路・港湾の管理、大寺社の修造などの社会事業を全国的に、かつ長期にわたって行なった。その結果、1500を超える末寺を全国に有した。しかし、15世紀以降には衰頽し、末寺も転宗したり、廃寺となったものも多い。そのために、従来、その全国的な展開に関する研究は等閑に付されてきた。もちろん、地域ごとに研究がなされてきたが、全国的な観点に立つ研究はなされては来なかった。平成28年度の本研究では、中世叡尊教団の九州地域、山口県、大阪府を中心とした畿内地域、鎌倉を中心とした関東地域への展開に関する調査を行ない、資料収集を行なった。 その中間的な成果を拙著『中世叡尊教団の全国的展開』(法藏館、2017)としてまとめた。本書によって、中世叡尊教団展開の「面」として広がり、とりわけ、九州・本州といった西国(尾張以西)への展開はかなり明らかにすることができたと考える。 また、研究過程において、叡尊教団の50以上の寺院が鎌倉将軍家祈祷所に指定されていることがわかり、その中間報告として拙稿「関東祈祷所-禅・律寺に注目して-」(『日本仏教綜合研究』一四号、2016)にまとめた。 しかしながら、学校行政に多くの時間を取られたこともあって、鎌倉極楽寺が中心的存在であった三河国より以東の東国における展開まで拙著で論じることができなかった。29年度には、その見通しをつけたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度には、研究成果の中間報告書として拙著『中世叡尊教団の全国的展開』(法藏館、2017)、拙稿「関東祈祷所-禅・律寺に注目して-」(『日本仏教綜合研究』一四号、2016)をまとめることができた。とりわけ、拙著は560頁の大著で西国における展開をひとまず明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまで研究が十分できなかった中国地方と関東地方に注目して、現地調査と文献調査を行ない、中世叡尊教団の全国的展開を明らかにする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、大学院の文化システム専攻主任、全学統括教育ディレクターといった管理職任務についていたために、残念ながら思うように出帳ができなかった。主に前年度までに収集した資料の整理分析を行い、拙著『中世叡尊教団の全国的展開』という著書の刊行などに務めた。そのために、旅費、謝金の支払いなども少なかった。平成29年度は管理職から離れたこともあって、拙著『中世叡尊教団の全国的展開』で触れなかった東国地域における叡尊教団の展開の研究を行う予定である。また、韓国の学者との戒律をめぐっての研究会も開催予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
4月中にすでに東京都、静岡県に出張を行って、中世叡尊教団の東国における展開を調査したが、毎月1度から2度の関東地域や中国・近江地域の調査を行なう予定である。また、7月には韓国東国大学で国際学術講演会を行う予定である。拙稿を英語に翻訳してもらうなど、国際発表の準備も行なう。謝金をそうした翻訳料にも宛てる予定である。
|