研究課題/領域番号 |
25370765
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
浅倉 有子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70167881)
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研究分担者 |
谷本 晃久 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (20306525)
佐々木 利和 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 客員教授 (80132702)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アイヌ漆器 / 場所請負商人 / 松前藩 |
研究概要 |
平成25年度は、初年度として、本研究全体の核となる文献・現有資料の調査を中心に進めた。本研究の遂行のためには、近世・近代の漆器生産地における生産者の史資料、蝦夷地への移出関係資料を発掘することが喫緊の課題である。そのため、輪島市の漆芸美術館、輪島漆器資料館、輪島漆器会館、加賀市の山中漆器伝統産業会館、珠洲市立珠洲焼資料館等にて文献史料調査班と考古学・民族(民俗)資料調査班の合同調査を行った。また連携研究者1名が越前漆器伝統産業会館、石川県立美術館・石川県立伝統産業工芸館、高岡市美術館、富山市博物館で、同じく1名が新潟市の西厳寺で、さらにもう1名が札幌学院大学等でアイヌ漆器に関する調査を行い、それぞれ研究を進めた。この調査によって、北海道内の埋蔵文化財センター所蔵の漆器椀と同形の椀が石川県内の博物館に収蔵されていることを確認した。また、漆器の仕様書が資料館に所蔵されたいることや「台盃」の制作方法を確認した。この仕様書については、26年度中の撮影をめざしたい。さらに、各漆器生産地の漆器の技法の相違や販売対象・生産戦略の相違を確認した。 それらの調査を受けて平成26年3月には、北海道大学アイヌ・先住民研究センター会議室において第1回研究集会「アイヌ社会と漆器I」を開催し、現在の研究の到達点を確認し成果の共有を図った。あわせて、漆芸作家や保存科学の専門家と情報・意見交換を行い、今後の調査対象や研究の方向性などを協議した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度として、研究の一つの核となる輪島市、加賀市等への文献班・考古学・民族(民俗)資料調査班による合同調査を実施し、多くの新知見を得ることができたた。また合同調査に参加できなかった連携研究者は、それぞれのテーマに沿った調査を行い、研究を推進した。年度末には北海道大学で研究集会を開催し、それぞれの研究成果の共有を図った。 研究代表者が長期入院を余儀なくされたため、思うように研究が進められなかったものの、研究分担者、連携研究者が精力的に研究を進めたために、総体として「おおむね順調な進展」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究全体の核となる文献・現有資料の調査を精力的に進めていく。 前年度の調査に加え、①京都などの先進的な漆器生産地や場所請負商人と関係が深い滋賀県蒲生郡日野町における伝来の漆器の調査、場所請負商人関係の文献史料を所蔵している滋賀大学、滋賀県立大学等における合同調査を実施する。 ②北海道内の博物館現有のアイヌ漆器の調査を実施する。北海道内の博物館において、コレクターによって収集された漆器コレクションと、地域の人々から寄贈・寄託された漆器資料の両者を調査し、各々の漆器の属性のデータと写真資料を集積する。これらの調査についても、可能な限り、文献史料調査班と考古学・民族(民俗)資料調査班の合同とする。あわせて、コレション・ヒストリーに関わる受入時のカード等の調査やインタビュー調査を実施する。 ③主要な史料の翻刻とデジタル化、分析を行う。文献史料調査班は、①の調査により収集した文献史料のうち主要なものの解読を補助者の協力を得て実施し、翻刻したものをデジタル化して、情報の共有を図る。同様 に考古学・民族(民俗)資料調査班は、調査により集積したデータを補助者の協力を得て整理・デジタル化して、情報の共有を図る。 ④特殊な技法を伴う漆器(たとえば熊を描いた沈金の漆器など)や高度の技術を必要とする「台盃」、行器・ 耳盥・角盥等の漆器の生産地の特定に努めること。そのため 前年度に引き続き、主要な史料の翻刻とデジタル化、分析を進める。 ⑤調査により集積した 現有漆器のデータを補助者の協力を得て整理・デジタル化して、情報の共有を図る。あわせて道内の博物館 が作成した収蔵漆器のデータを入手して分析を進め、地域的特色や分布の状況を確認する。さらに、特定の場所請負商人と特定の漆器の結び付きについて、考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が、不慮の病のため長期入院を余儀なくされ、研究計画が予定通りに推進できなかったため。 今年度進めることができなかった調査旅費と資料のデジタル化のために使用したい。
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