本研究は、聞き取り調査と文献史料の解読によって、高度経済成長期における大阪市の「釜ヶ崎」地域の歴史的形成過程を考察したものである。具体的には、当該地域に生きた人びとによって刊行された二つのローカルメディア『裸』と『労務者渡世』について、その誌面の分析と編集活動に関わった当事者からの聞き取りを通じて、どのような労働者文化が形成されたのかを解明しようとした。結果として、『裸』は文芸活動を通じて日雇労働者の更生意欲を喚起し、『労務者渡世』は生活情報提供を通じて、「労務者」としての自己肯定を呼びかけるものであることを明らかにした。
|