本研究は、近代遊郭における遊女屋(貸座敷業者)のもとで作成が義務づけられていた「遊客名簿」を素材として、男性遊客の実態(住所・職業・年令など)と登楼状況(頻度・相方娼妓との関係・消費金額など)、および娼妓の就業状況(1日当りの接客数、休業日数、継続年数)などの復元を試みた。特に地方小都市型の事例として福島県郡山遊郭を主たる分析対象としたが、そのほか大都市型、観光地型などの事例をあわせて、1910-1920年代における遊客数の変遷に、いくつかの類型があることがわかった。また、遊客数の増加は、不況下での消費金額の停滞と娼妓の労働強化を招き、性病罹患率の増加をもたらすことなどもあきらかにした。
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