今回の検討によって、東京大学史料編纂所の絵図模写本は71点あり、このうち34点に模写年が明記され、16点には写生師名が記載されていることがわかった。残りの47点を書写技術の観察と模本の仕立て形式によって形態編年すると同時に、西岡虎之助コレクション(126点確認)と比較校合することによって、東大の史料収集・影写模写作業のあり方、西岡の果たした役割・影響が明らかになった。東大の絵画史料は西岡が収集したものではなく、本来近代史学草創の早期において東大自身が収集したものであり、西岡はそれに学ぶことにより西岡民衆史学を確立したのが明らかになった。幾多の「西岡神話」を訂正することができた。
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