本研究は、阿波国那賀川流域を事例に、近世日本の森林資源をとりまく生業と流通を、地域に生きた人びとを軸に構造的に明らかにすることを目標とした。 成果として第一に、当該地域随一の質量を誇る湯浅家文書の整理と全点写真撮影を進めることで、当文書群を今後活用できるための基礎条件の整備をめざした。 第二に、材木・薪炭のみならず椎茸・紙・茶など多様な森林資源(産物)が地域の場でいかに産出されたのか、またその流域からの流通構造の展開と藩による統制との関係を、歴史具体的に解明した。とくに近世前期における分一徴収のあり方や、後期の仁宇谷産物仕法など、藩側が産物流通を統制しながらもそれに吸着する実態を解明できた。
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