研究成果報告書として、『球陽外巻「遺老説伝」の総合的研究 本文篇』を印刷した。これにより、尚家文書№1251『球陽 遺老説伝』(尚家本)を底本とする校訂について、本文全文の校訂テキストと書き下し文を提示することができた。今後、校訂テクストにより、用語用字の検討や現代語訳など、さらなる研究の推進が可能となった。料紙研究の領域においては、基本的な手法の習得により、近世琉球の文書・典籍を対象とする史料論の体系化に関わる研究を推進していく方途を見い出すことができた。今年度は、宮良殿内本『遺老説伝』の調査により、裏表紙から文書を摘出し、料紙の分析を行うことにより、新たな知見を得た。内容面では、宮古島に関する内容が多いことに注目する先行研究に対し、元テクストの『旧記』や大正期の郷土史家の認識などと対比することにより、首里王府直轄以前の宮古島をめぐる史話史伝について新たな位置づけを行った。
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