研究課題/領域番号 |
25370784
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
國 雄行 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60234457)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 欧米農業 / 在来農業 / 明治農政 / 勧業寮 / 勧農局 / 殖産興業 |
研究実績の概要 |
本年度は、1.資料調査、2.農法調査、3.論文執筆を行った。 1.資料調査としては、北海道七重町の七飯歴史館が所蔵する迫田文書の調査を行った。この文書は明治期の開拓使七重試験場について記された貴重な資料である。また当館学芸員の方の厚意により、迫田文書目録をコピーさせていただいた。 2.農法調査では、欧米農業が在来農業に与えた影響を明らかにするため、本年度は特に東北、北海道地方の在来、外来農業を調査した。東北では岩手県立農業科学博物館などの展示資料により新たな知見をえた。また秋田県立農業科学館では県全域の農業状況を概観し、洋式農具より、在来改良農具が普及している点、明治時代には腐米改良事業が重要である点を確認した。北海道の八雲町郷土資料館では、明治期の開拓農業ではプラウ、ハローなどの洋式農具が使用されていたことが確認できた。 3.論文執筆では、本年度は明治前期農政を分析するため、内務省の勧農局期(明治10-14年)に焦点を当て、同局が適地適作を奨励するため、従来の五穀偏重を打破し、荒地や稲作不適地に適合する有効な植物の移植をはかるとともに、輸入防遏のため米国綿の移植、甜菜等の栽培を進めた点を明らかにした。また、本政策の中心機関であった内藤新宿試験場が、政策の進展とともに必要度が低下したため廃止されたことも明らかにし、「内務省勧農局の政策展開─内藤新宿試験場と三田育種場1877-1881年」として首都大学東京の『人文学報』第512号(歴史学編44号、2016年3月)に論文を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究の目的」には研究課題として、(1)東北、北海道などの開拓地の多くは欧米の農具で開拓されたのではないのか。(2)明治期に移植された欧米の種苗と、現在の日本各地で栽培されている西洋種苗とには関連はないのか。(3)農業試験場、農事通信など、欧米から導入された農業諸制度は、日本農業発展の一助となったのではないのか。(4)欧米農業と在来農業(特に西日本の農業先進地帯)は、その技術を互いに摂取しながら、発展したのではないのか。と記した。 (1)については、本年度、東北地方の岩手県、秋田県、北海道の道東、道南地方を中心に調査を行った。28年度の調査は北海道の道北地方を中心に行う予定である。 (2)の西洋種苗の調査として、甜菜導入を調査するため北海道帯広市のビート資料館、山梨県におけるフランス産ブドウの導入について調査するためメルシャンワインの資料館において調査をした。 (3)については、特に北海道開拓使に着目し、北海道七重町の資料館を調査した。また東京の内藤新宿試験場について検討し、前記のごとく論文として刊行した。 (4)については、岩手県立農業科学博物館において、寒暖の激しい岩手県内において在来農具を改良した農具のほか、プラウ(西洋犂)が利用されたことを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の「研究計画・方法」に、28年度は最終年度にあたるので、前年度までに収集できなかった日本各地の史料を収集すると記したように、本年度は25~27年度において資料収集、調査に行くことが出来なかった地域を調査する。予定として、資料収集では北海道地方の道北地方の資料館等において西洋農法の導入状況を調査するとともに、27年度に調査できなかった徳島県、香川県、愛媛県などの資料館において、甘蔗の導入など、糖業について調査する。また、岐阜県、三重県、愛知県などの在来農業が盛んな地域において、在来農業と西洋農業との関係についても調査したいと考えている。 以上の調査から、明治政府、とくに内務省勧業寮(のち勧農寮)が推進した欧米農業の導入政策について在来農業との関係から明らかにするとともに、これらの政策が修正され、その結果として農商務省が成立していく過程を追究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集資料のデータ分析を行わず、人件費が未使用となっため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年は、資料収集を行い、データ分析を行う予定であるので、次年度使用額は、これにあてる。
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