近世村落の行政のあり方を、庄屋日記に焦点をあて、地域情報という視点から考察した。肥後国高浜村の庄屋上田家文書を中心に、山城国上津屋村伊佐家文書、対馬藩政文書の毎日記を対象とした。結果、近世の村は18世紀末以降、船頭等の情報を収集し、天然痘・異国船来航への危機に対応し行政能力を向上させた。その能力は、村役人が日記を中心として情報化を進め、地域情報として収集・活用・管理し、行政を実施したことである。近世日本の村は、地域情報の活用により村の安全を維持し、村全体の向上を目標としていた。また近世の領主にとっても、村が収集した情報の重要性は次第に増し、それに依存する「情報請」の状態を構築した。
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