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本研究は、中世系譜史料の事例研究を積み重ね、個別事例の体系化を図ることによって、中世史料学の進展に寄与しようとするものである。また、系譜史料の史料的価値を高める方法論を構築することを通し、史料的制約を抱える分野の一つである東北地域史研究において、系譜史料の活用を広げることを目指す。
今年度は、東北地方に現存する系譜史料および東北地域史研究の素材となる系譜史料を中心に、関連文書もあわせて調査・分析を進めた。具体的には、山形大学小白川図書館所蔵「中条家文書」に所収されている系譜史料と関連文書、秋田県公文書館に所蔵されている小野寺氏関係の系譜史料と関連文書、出羽清原氏に関わる系譜史料などである。
このうち「中条家文書」所収の系譜史料と関連文書の中に、隣接する越後国（新潟県）の地域史研究の素材となる史料があり、研究史上、まだ解明の余地が残されている内容を含んでいることを見出した。また、小野寺氏関係の系譜史料と関連文書については、改易された後の近世になってから、小野寺氏と旧臣とのつながりを示す諸史料が残されており、注目に値する。さらに、出羽清原氏に関わる系譜史料に関しては、近代に編纂された系図に基づいた最新の研究に対し、当該系図あるいは系図編纂についての検討が不十分な点を確認できた。
一方、前年度に引き続き、東北地方における歴史資料保全活動の調査を進めた。前年度までの調査結果を踏まえ、今年度も複数の研究協力者を伴って宮城歴史資料保全ネットワークを訪れ、保全活動の現状と保全された史料群について調査を行った。その中で、未紹介の系譜史料を発見し、被災した現状のままで大まかな内容を確認した。今後、史料群の整理が済んでから、改めて詳細を調査することにしたい。また、歴史資料保全活動によって発見された別の中世文書群を閲覧する機会を得ることができた。
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