本研究は、中世系譜史料の事例研究を積み重ねて個別事例の体系化を図ること、東北地方に現存する系譜史料の史料的価値を高めることを目指すものである。具体的には、公家系譜史料の基礎的考証、東北地方に現存する系譜史料および関連史料の分析を行い、記録史料学の長期的視座を取り入れて研究を進めた。その結果、公家社会において氏族を超えた系譜史料の共有が見られ、中には有職故実書というべき性格を持つ系図集があったこと、東北地方に現存する系譜史料は家伝文書とともに長期にわたり保有・相伝されたことなどを明らかにした。いずれも系譜史料のライフサイクルを見通した成果で、記録史料学の視座が有効であることを提起できる。
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