研究課題
本研究は、(1)”生命の再生産”の畸形化された一形態としての遊廓の構造を、遊廓を中心とする社会的結合のあり方という視点から明らかにすること、(2)遊廓をめぐる社会的結合を、ジェンダーの視点および近世近代転換期という移行期の特質をふまえて動態的に把握すること、(3)遊廓をめぐる社会的結合の性格を、その社会的基盤としての農村、幕府・朝廷などの政治的権力との関連にも注目しつつ解明すること、の三点を課題として行った。これらの課題解明のため、3年間の研究期間に、5回の長野県須坂市坂本家文書・中野市山田家文書調査、2回の西尾市岩瀬文庫史料調査等を実施し、以下の成果をあげることができた。第1に、兵農分離下の近世城下町に固有の”生命の生産“を畸形化する構造とその政策的背景を指摘し、近世都市におけるジェンダー抑圧の要因の一つを明らかにした。第2に、遊女屋と遊女の関係を相互規定的な関係にあるものとして遊廓の構造を動態的に把握する視座を提起した。また、近世近代転換期における身分制解体過程のなかで、その構造がいかに変化するのかを解明し、芸娼妓解放令から近代公娼制への展開過程を展望した。その過程で、近世・近代転換期の地域社会における遊女の実態分析をすすめ、さまざまな遊女の人生をその主体性にも着目しながら復原できたことは、近代の性売買研究にも寄与するものと考える。第3に、城下町における遊廓を経済的にささえる構造として、農村や幕府・朝廷におよぶ広域的合法的なネットワークの存在を明らかにした。以上、本研究により、近世都市史研究におけるジェンダー視点の意義を遊廓を題材として実証的に明らかにすることができた。
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