研究課題/領域番号 |
25370796
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
愼 蒼宇 法政大学, 社会学部, 准教授 (80468222)
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研究分担者 |
檜皮 瑞樹 早稲田大学, 大学史資料センター, 助教 (00454124)
鄭 栄桓 明治学院大学, 教養教育センター, 講師 (90589178)
宮本 正明 立教大学, 立教学院史資料センター, 学術調査員 (20370207)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 境界 / 在日朝鮮人 / 対馬 / 朝鮮半島 / 植民地支配 / 南北分断 |
研究概要 |
平成25年度は、主に対馬市内に所在する史料の調査・整理・分析を行うのが第一の作業目的であった。対馬には二度史料調査に行った。一回目は2013年9月5日~8日のうちの7~8日であり、まずは対馬の近代以降の行政文書の全体像を知るために長崎県立対馬歴史民俗資料館を訪問、「対馬島庁文書」の所在を確認した。二回目の調査は、2014年2月27日~3月1日の2泊3日にわたって行い、「対馬島庁文書」の閲覧、目録の整理、記録、撮影を行った。当該テーマを明らかにするにあたって必要な資料が、ここに今まで使われることなく膨大に存在していることを確認でき、極めて大きな成果を得たが、来年度も引き続き長期にわたる資料調査が必要であることを同時に確認した。 第二作業目的は、対馬の新聞・雑誌へのアプローチである。2月28日には対馬新聞社を訪問し、戦前の新聞の所在が未だ不明であることを残念ながら確認する。第三の作業目的は、戦前に編纂された対馬の自治体誌、各種社会団体の編纂誌などの調査である。この点については、9月5~8日の調査の際に、長崎県立図書館に行き(6日)、対馬の各自治体誌(島誌・町誌)と、長崎県警発行の雑誌『警鼓』の史料調査を行い、大きな成果を得た。また、九州大学図書館と付属記録資料館産業経済資料部門も訪問し(5日)、東邦亜鉛対州鉱業所に関する史料調査も行った。第四の作業目的は、在日本大韓民団(民団)、在日本朝鮮人総連合会(総連)と協力し、対馬の朝鮮人史に関する資料調査、関係者へのインタビュー・録音記録などを行い、整理を進めることである。複数の関係者へインタビュー、あるいはインタビューの約束(26年度)を行うことができた。 ほかにも研究代表者、分担者それぞれが上記四つの作業目的に関する史料調査を行い、成果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に「史料の調査・整理・分析」を行うという目的のうち、「史料の調査・整理」はおおむね順調に達成することができたといえる。対馬では二度史料調査に行ったが、とくに長崎県立対馬歴史民俗資料館を訪問し、近代の対馬行政について知ることができる「対馬島庁文書」の所在を確認できたことは大きい。二回目の調査では、「対馬島庁文書」の閲覧、目録の整理、記録、撮影を行った。とはいえ、「対馬島庁文書」は、人事・寺社・統計・海水面埋立・地籍・地理・令規・官地・土木・営繕・道路・橋梁・外務・旅券・帰航・渡航・産業組合・災害等、579個にも及ぶ膨大なものであり、全体の整理・分析にはまだまだ時間を要するということも確認できた。 また、対馬の戦前の新聞の所在が未だ不明であることは大変残念な結果であった。戦前に編纂された対馬の自治体誌、各種社会団体の編纂誌などの調査も大きな成果を得るとともに、まだまだ資料調査が必要である。対馬の朝鮮人史に関する関係者へのインタビュー・録音記録なども端緒についたところである。 ほかにも研究代表者、分担者それぞれが上記四つの作業目的に関する史料調査を行い、成果を得ており、おおむね順調に「史料の調査・整理」は進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、まず第一に「史料の調査・整理」を引き続き行い、さらには「分析」に結びつける年にする予定である。「史料の調査・整理」のなかでも、長崎県立対馬歴史民俗資料館にある「対馬島庁文書」の調査・整理は引き続き重要な推進課題であり、閲覧、目録の整理、記録、撮影を引き続き行う。とはいえ、欠損番号も多く、当資料館にない行政文書について調査を行う必要もある。その上で、全体の史料整理・分析を進めることにする。また、26年度は、対馬市内に所在する資料調査と並行して、長崎県(対馬市以外)や北九州に所在する対馬の対朝鮮・朝鮮人政策、朝鮮人史関係資料、その他地域に所在する対馬の対朝鮮・朝鮮人政策、朝鮮人史関係資料の調査・整理・分析も推進する。長崎県立図書館には官省指令留の文書や、「長崎日日新聞」「長崎新聞」「東洋日之出新聞」「九州日之出新聞」「長崎民友新聞」「夕刊長崎タイムス」などの郷土新聞が所属されている。 その他地域に所在する対馬の対朝鮮・朝鮮人政策、朝鮮人史関係資料については、『対馬要塞重砲兵聯隊史』をはじめ、防衛庁図書館所蔵の資料の調査を行う。また、『軍事警察雑誌』(国立国会図書館)などから警察・憲兵関係の資料、総督府の政策については膨大な総督 府関連資料を使い、朝鮮人の渡航・移住・生活をめぐる統制の現地レベルでの展開を明らかにしていく方針である。植民地期の朝鮮人の資料に関しては、植民地期における民族運動関係の雑誌、新聞資料を調査・整理・分析する。戦後から1960年代までの対馬の対朝鮮・朝鮮人政策や朝鮮人運動の資料に関しては、占領期のGHQ関連資料、とくにプランゲ文庫(国会図書館憲政資料室)には、検閲された在日朝鮮人運動関連の資料が多く存在する。これらの資料を再検討するとともに、引き続き関係者へのインタビュー・録音記録に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の鄭栄桓氏は、関係者のインタビュー(鄭氏が多く担当している)等で旅費などを少し確保しておきたいことや、物品等にも多少の余裕を残しておきたく、次年度繰越しが可能であるとのことから、そのように判断した。研究分担者の宮本正明氏は、物品等の購入、旅費の使用で、多少残額が生じ、来年度に繰り越せるとのことから、物品等の購入分を次年度に少額ではあるが残そうと判断した。 鄭栄桓氏による、関係者へのインタビュー、録音記録での旅費、物品等購入での使用。宮本正明氏による、物品等購入での使用。
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