当該年度は研究の最終年度であり、史料収集作業については九州地域を中心に実施した。合わせて『南北朝遺文』から山野紛争関係史料を収集した。さらに、収集した山野紛争関係史料についてのデータベース化の作業を行った。収集した中世後期の山野紛争関係史料は200点を超えるが、関連文書を整理するとデータベースの件数として約140件のデータを得ることができた。データベースについては、一覧表に作成して報告書に掲載した。 現地調査については、2年間にわたる調査・史料撮影等で研究の進展が見られた京都府井出町の高神社及び多賀地区を中心に実施した。高神社に所蔵される文永9年の「高神社造営流記」(山城郷土資料館寄託)によれば、隣郷との山野紛争の際に住民から「兵乱米」を徴収し、紛争解決後に蔵に納めて運用して造営を行ったことが記されている。高神社には文永以外にも戦国期の造営記録もあり、紛争と村落組織・地域社会との関係を考察するのに相応しい地域である。そこで、8月に宮座の構成や祭礼の現状、山の利用などについての集中的な聞き取り調査を行った。さらに10月には祭礼についての調査も実施した。調査で得られた史料や聞き取り調査の内容については報告書に掲載した。 山田荘・淡河荘関係についても神戸市文書館で近世の相論絵図についての調査・写真撮影を行い、合わせて近世初期の山野紛争に関する現地調査を実施して報告書に掲載した。研究会は4回実施し、12月の研究会ではヨーロッパ史との紛争に関する研究交流を行った。
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