本研究は、熊本藩の儒者木下イ(韋+華)村の日記を手掛かりとして、幕末維新期儒者たちの動向を解明することを主眼とした。木下の日記には、幕末期儒者たちのネットワークがかなり詳細に記されている。木下が江戸において親しく交わった安井息軒・塩谷宕陰の二人は、久留米藩の神官眞木和泉守とも交流していた。木下が眞木に会った形跡はないけれども、木下の弟小太郎が眞木と交際しており、眞木は熊本の木下の実家を訪ねてもいる。またこれまでほとんど交渉がないと思われていた佐賀藩の枝吉神陽は、江戸及び熊本で木下に教えを受けていたことも判明したが、枝吉の門弟たちは後に眞木と会って、討幕運動を計画することになる。
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