最終年度の2015年度、筆者はここまで蓄積してきた研究成果をまとめる作業に着手した。その一環として、本研究テーマに関連するシンポジウムで研究発表の機会を持った。 一つは、2015年7月11日に行われた、京都大学人文科学研究所共同研究班「日本宗教史の再構築」ワークショップ「「異端的宗教活動」の近世―キリシタン・かくれ念仏・民衆宗教―」(京都で実施)における基調報告で、「近世日本の「邪正」と異端的宗教活動」と題する発表である。この催しでは、筆者が近年、積極的に提唱している異端的宗教活動というカテゴリーによって、近世日本の被治者の宗教活動を横断的に捉えるという方法について、議論を深めることができた。 もう一つは、2015年9月12日に行われた、「マレガ・プロジェクト」(バチカン図書館のキリシタン禁制関係史料群の整理・保全を目指すプロジェクト)の国際シンポジウム「キリシタンの跡をたどる―バチカン図書館所蔵マレガ収集文書の発見と国際交流―」(ローマで実施)における基調報告で、「16-19世紀日本におけるキリシタンの受容・禁制・潜伏」と題する発表である。この催しでは、国文学研究資料館が中心となり、東京大学史料編纂所も協力して進められている共同研究「マレガ・プロジェクト」の参加者の一人として、近世日本のキリシタンをめぐる人びとの対応を概括的に整理し、今後のキリシタン史研究の課題を提起した。これは、2016年3月に発行された『国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇』12(通巻47)に掲載された。 また、本年度中、福岡で行われた「近世の宗教と社会」研究会、福井で行われた民衆思想研究会に参加して、関連する議論を深めたことと、この科研費の次につながる研究のため、佐賀に史料調査に出かけたことを付記する。
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