本研究課題の最終年度である今年度は、まず日本による台湾統治が開始された1890年代からアジア・太平洋戦争末期の1940年代前半にかけて、マスメディアで報道される台湾先住民女性のイメージがどのような変遷を遂げるのかを、「台湾日日新報」の中の関連記事を網羅的に抽出するという方法で調査・分析を行い、さらに日本各地で発行されていた新聞の中の台湾関連記事も適宜、補足資料として分析を加えるという形で、その全体像について考察した。この考察結果については、現在、研究論文としてまとめる準備を行っている。 次に、1930年代に焦点を絞り、「蕃地」の「内地」化政策が展開される中で、台湾先住民女性に対して行われた「助産婦」育成事業を取り上げ、在台日本人女性、漢民族女性との関連を念頭におきながら、その具体像を考察した。具体的には『理蕃の友』および「台湾日日新報」の関連記事を主な資料としながら、(1)1930年に台北州で開催された台湾先住民女性対象の「助産婦」講習会をきっかけに各地で推進されることになる台湾先住民「助産婦」育成事業が、それ以前の在台日本人女性および漢民族女性を対象とした「助産婦」養成の流れとどのように関連するのかを明らかにし、(2)さらに台湾先住民「助産婦」育成事業の目的について、当該期の台湾先住民政策全般との関連で考察した。このような研究成果の一部については、2018年3月に開催された台湾史研究会・例会にて「1930年代の台湾原住民政策の展開-「内地」観光事業、「助産婦」育成事業を中心に-」と題した口頭発表を行った。 現在は本研究課題全般に関して、さらに補足的な資料調査と分析を行った上で、2018年夏に開催される台湾歴史学会・台湾史研究会共催の国際研究集会「第21回現代台湾研究学術検討会」にて研究発表を行うことが確定したため、発表に向けて最終的な準備を進めている。
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