今年度は主に氷上郡を中心とした丹波国関連古代・中世文献史料の収集、整理、調査にあてた。 1)古代文献史料調査:六国史など古代編纂史料を収集した。古代氷上郡だけではなく、丹波国関連のものであっても、多紀郡など氷上郡と密接に関連する地域のものも含め調査をおこなった。また、木簡史料については、宮都木簡とともに、兵庫県立考古博物館において丹波市内の郡衙関連遺跡である市辺遺跡(氷上町)・山垣遺跡(春日町)出土木簡や墨書で土器を見学した。その結果、「西県」と「東県」を管轄すると言われている両官衙遺跡の役割分担のあり方や、加古川水系・竹田川水系だけではなく篠山川沿いの交通路を含めることでより実態に即した解釈が可能となることが明らかとなった。さらには文献史料や木簡史料や現在に残る地名などから、古代氏族の分布状況を復元し、古代の郷域に居住する人々の基礎的なデータを収集した。 2)地域遺産調査:地域遺産を活用するという本研究の観点から、旧町史や村史などに所載の古代に関する情報や、自治会文書・旧家文書に残されている近世史料や圃場整備前の空中写真、字限図などから前近代の景観復元を試みた。その結果、従来旧町史や村史類では指摘されていなかった条里の痕跡が復元された。また、かつてあったが現在は削平などにより破壊された古墳や遺跡などの情報についても地元住民から聞き取りをおこなうことで、発掘報告書にみられる遺跡情報に追加することができた。
|