今年度は主に氷上郡を中心とした各郷の歴史的・自然的環境を確認するためのフィールドワークと史料調査を主におこなった。また、並行して市内の中世から近代にかけての地域遺産についても、研究協力者の助言を得ながら調査をおこなった。 1)条里の復元的研究:古代氷上郡のうち、比較的条里遺構が残されている氷上町横田地区などを中心に、調査をおこなった。その結果、長地型のプランを想定することができた。 2)古代山陰道など古道の復元的研究:氷上郡内の古代山陰道のルートはもちろんのこと、地元で伝承されている古道や、今に生きる「古道」のルートを参照しながら、人々の交通や地域間交流の在り方について検討をおこなった。その結果、市島町と氷上町を結ぶ「鴨坂」ルートの存在が明らかとなり、鴨社領の展開とも密接に関連していることが明らかとなった。 3)古代の生業研究:氷上郡からの荷札木簡などにより、貢納物データを整理し、中世荘園からの貢納物ともあわせながら復元した。 4)古代の式内社研究:氷上郡の場合、郷数と式内社数が近似し、また現存式内社の位置と郷域も近似していることから、前近代における式内社分布や、奉斎氏族や奉斎神などの研究をおこない、郷域の支柱としての神社の在り方について検討をおこなった。 なお以上の研究成果の一部に関しては、近大姫路大学人文学・人権教育研究所編『翰苑』第2号の「古代郷域史研究序説-丹波国氷上郡の諸郷を例に」において、報告済である。
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