2年目の本年度は、以下の研究意識に基づいて具体的な調査と分析を進めた。 15~16世紀日本の戦国大名領国の研究は、従来の文献史学が描く歴史像に考古学の発掘成果が加わり、また海外からの視点も加味されることで、近年急速に進歩し、分析方法も多様化してきた。しかしながら、国内の文献・考古史料の分析が充実するなかで、いまだ手つかずの状態なのが、戦国大名が交流をもった海外の諸国に残される史料の分析である。西欧の大航海時代に象徴されるように、人間の活動が世界的規模に拡大し始める16世紀の時期、日本の戦国大名に関連する各種の史料は、近隣の中国・朝鮮半島等の東アジア地域のみならず、南アジアのインド、そしてヨーロッパ地域にも残存するようになる。 今年度の調査実施対象地域は、国外はイタリア、そして国内では福岡、鹿児島、愛知、愛媛、広島、東京、三重の各地域に絞り込み、関連史資料の調査・蒐集活動を実施した。 発表した研究成果としては、論文「戦国大名と海・船・交易」(『東アジア海域に漕ぎだす6 海がはぐくむ日本文化』東京大学出版会)、学会口頭発表「文献・考古融合研究による中世商人像の顕然化」(第112回史学会大会日本中世史部会)その他がある。また、平成27年4月から開催の九州国立博物館開館10周年記念特別展「戦国大名―九州の群雄とアジアの波涛―」は、本研究と同じく西国の戦国大名の特にアジアに目を向けた諸活動と交流に着目した企画であり、同展図録の編集にも参画した。
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