研究実績の概要 |
本研究を実施する上では、北海道内に所在する北海道外関係の近世武家文書(以下、「道外文書」と略記)の所在調査と個々の文書群の構造分析から、その全体像を把握すること(個々の文書群全体の概目録と、その中の近世文書1点1点の資料目録の作成など)が欠かせない。平成28年度の主な成果は、以下の通りである。 ①既に所在を確認していた「道外文書」について、資料目録の作成と内容分析を進めた。主な文書群として、釧路市鳥取神社所蔵の美田家文書74件・津阪家文書2件・野村家文書26件(明治10年代後半に現釧路市に移住した旧鳥取藩士の文書群)が挙げられる。 ②資料目録を作成した南幌町郷土史研究会所蔵の板垣家文書1,548件(明治26年(1893)以降に現南幌町へ移住した三重団体を率いた旧藤堂藩士の文書群)に関して三重県総合博物館及び松浦武四郎記念館と、北海道博物館所蔵の斉藤家文書434件(明治4年(1871)に旧仙台藩白石領の家臣団の団体移住として現札幌市白石区へ移住した旧仙台藩陪臣の文書群)に関して東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門と、北海道博物館所蔵の水町家文書180件(明治18年(1885)に屯田兵として江別兵村へ移住した水町家の文書群)に関して佐賀県立図書館と、それぞれ意見交換し、各資料群について情報提供するとともに、研究史上の重要性を確認した。 また、最終年度であることから、平成25年度からの調査成果を踏まえ、「道外文書」をめぐって、ほぼ全ての文書群に知行宛行状や武芸免許状などの武家としての由緒を物語る古文書が含まれていること(逆に、それに特化している場合も多いこと)、道内における所在把握と道外への情報発信が急務であることなど、その特徴及び現状と課題について整理した。
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