研究課題/領域番号 |
25370818
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
金山 正子 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (20311491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 資料保存 / アーカイブ / 状態調査 / 劣化促進試験 / 保存処理 |
研究概要 |
永年保存が定められているアーカイブ資料の中には、記録素材としての寿命が短い素材も含まれる。とくに彩色顔料や感光素材を使用している記録資料には、水銀朱の黒化、緑青の茶変色、没食子インクの茶変色、白黒写真の銀鏡化、複写資料の変褪色などのさまざまな劣化症状がみられる。これらの中には劣化が進行すると腐食して支持体である用紙ごと崩れ落ちてしまう「焼け」といわれる症状を呈するものも多い。本研究では、積極的にこれらの劣化を抑制する方法の探求を進め、また大量のアーカイブ資料に混在する経年劣化の懸念が大きい資料を積極的に保全するシステムの構築を目的とする。 1.アーカイブにおける劣化資料の現状と保管状況の調査は、国立歴史民俗博物館、清水建設株式会社、沖縄県伊江島反戦平和資料館で実施した。 2.実験サンプルの作製と劣化促進試験は、調査データをもとに短命資料のサンプルを作成し、劣化促進試験により強制劣化させたサンプルを用い成分分析を行う。作製したサンプルに各種保存処理・強化処理を行った後、再び劣化促進試験をし、各種試料と保存処理・強化処理法との適応性を確認する。現在、調査先での曝露試験中であり、平成26年度に引き続き分析を進める予定である。 3.海外での研究成果との比較検討とアーカイブ調査は、UNHCR(国連高等弁務官事務所)アーカイブに調査に赴いた。ここは日本の多くのアーカイブと同様に未整理資料が大量に移管されているが、その現地部局は世界各国に分散されており、世界中の原課で作成された文書が集まっており、保存の実情について現地アーキビストらと意見交換した。また海外アーカイブの記録資料および付随するモノ資料の保存システムの確認としては、展示設備もアーカイブシステムも非常に充実している赤十字ICRCアーカイブを調査し、担当アーキビスト達からレクチャーを受け、また保存管理についてディスカッションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
劣化促進試験および曝露試験の実施予定が、調査先との日程調整等が変更したためやや遅れており、沖縄県伊江島にて曝露試験後のサンプル試料の分析が平成26年度にずれこんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初はなるべく多くの保存機関を訪れて現状調査を重ねる予定でいたが、調査の実施を進めるにあたって、対称資料をとくに劣化損傷の進みやすい資料に絞って比較検討するほうが有効だと見直しをしている。また、アーカイブでも複合的な素材を含むモノ資料が多数保管されている実情は内外ともに同様である。そのため、実施調査は沖縄県伊江島反戦平和資料館とUNHCRアーカイブを主とする調査対象とし、実験サンプルを使っての比較検討などを行いたいと検討中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していたサンプル試料の曝露試験が遅れたため、現地調査を次年度に延期した。遅れた理由は、調査に使用するため購入した分光測色計のソフトのメーカー調整に予定以上の日数を必要としたため。 次年度中に沖縄県反戦平和資料館における現地調査を2度実施する予定である。
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